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お天気豆知識

地球規模の空気の流れの記事一覧

No.72

2007.1 Categories地球規模の空気の流れ

コリオリの力

 Jリーグの試合、楽しみにしている人はたくさんいると思います。私はいい年なのでサッカーの思い出というと、高校時代に日本チームがメキシコオリンピックで取った銅メダルのことです。この試合は衛星中継され、日本での放送時間は早朝でした。もちろん見ました。見終わってから、学校へ自転車で足が痛くなるほどの全速力で行き、1時間目の授業に間に合いました。ところが、私のクラスで一時限目に出席した男子生徒は、私を含めて3人でした。一人はサッカーに興味がなく、もう一人も全速力で自転車で来ました。1時間目は数学で、先生は首をかしげながら、「今日は変だな。」と言って授業を始めました。他のクラスはわかりませんが、このことは校内で問題にならなかったようです。当時はプロチームこそありませんが、校内でサッカーが盛んだったので、先生方も事情がわかっていたのでしょう。
 前置きはこのぐらいにして、試合中あるいは練習中に走っている味方にボールをバウンドさせずにパスを出すことを思い浮かべてください。当たり前のことですが、今見えている相手の位置にパスを出すと、その人は走っているので、ボールはその人の後ろに落ちてしまいます(図1)。パスを出すときは、その人の前の方に蹴る必要があります。


(図1)走っている人にボールを蹴るときは・・・

(図2)回転円盤の上のボールの動き

 今度は、回転する円盤の上で、お互いに止まった状態でパスを出すことを考えてください(図2)。
例えば、円盤が反時計回りに回転(時計の針の回転と反対方向に回転)しているときに、相手に向かってボールを蹴るとどうなるでしょう。ボールはA点からB点に向かってまっすぐに飛んでいきます。しかし円盤が回転しているので、蹴った人はA´点に動き、受ける人はB´点に動きます。このため、蹴った人から見て、相手が左に動いているため、ボールは受け手の右の方に落ちます。蹴った人から見ると、ボールが右向きに力を受けて飛んでいったように見えます。

 このように、反時計回りに回転する円盤上で動く物は、その上に居る人から見ると、右向きの力が働いているよう見えます。この見かけの力を、「コリオリの力」と言います。

 地球は絶えず反時計回りに回転しています。このため、地球上で動くものはすべてコリオリの力を受け、地球上に居る人から見ると北半球で動くものはすべて右の方に動くように見えます(図3)。


(図3)地球上の物体の運動(北半球)

(図4)等高度線・等圧線と風の吹き方

 空気の流れもコリオリの力を受けています。そのため、上空では気圧が高い方から低い方へ動かそうとする力(気圧傾度力)とコリオリの力が釣り合って、空気の流れは等高度線(等圧線)とほぼ平行に吹きます(図4上)。つまり、北半球では高度の高い方を右に見るような空気の流れとなり、日本がある緯度帯では北に行くほど高度が低いので、日本の上空では西寄りの風が吹います。地上では地球の表面と空気との摩擦力が風を弱めるように働くので、気圧の低い方に向かって空気が流れます。北半球の地上では、気圧の高い方を右にすると風は左手前方に吹きます(図4下)。
 地球上で動くものすべてにコリオリの力が働きますが、その影響がわかるのは動く距離が大きい場合だけです。“ボールをゴールに向けて蹴ったけれど、少し曲がってゴールにならなかった”というシーンもありますが、これはコリオリの力の影響ではありません。ボールが飛ぶ距離ぐらいではコリオリの力の影響は限りなくゼロに近く、ボールが曲がって飛んでいくのは別の原因です。野球で場外に飛んでいくような打球や、飛んでいくゴルフボールもコリオリの力の影響は限りなくゼロに近く、打球が曲がる原因は別のものです。

No.37

2004.2 Categories地球規模の空気の流れ

地球規模で吹く風

 日本列島は偏西風帯にあるということをよく聞くと思います。このため、高気圧や低気圧がほぼ西から東に移動し、天気も西から崩れてくることが多いことは経験済みです。日本の南は、年間を通してみると高気圧帯となっています。その中心は北緯30度付近です。さらに南に下がっていくと赤道付近にかけて東よりの風が卓越しています。
(図1)は冬と夏の平均地上天気図です。(図1)はこちらをクリック
この図から、北半球、南半球とも30度付近には高気圧帯があり、特に大西洋ではっきりしていることがわかります。北半球では高気圧から時計回りに風が吹き出すことを頭に入れてこの図を見ると、この高気圧帯の極側、北半球の北側では西よりの風が吹きやすくなっています。一方、赤道付近が低圧部になっていて、30度付近にある高気圧帯から赤道付近にかけては東寄りの風が吹きやすくなっています。北半球ではこの東寄りの風が吹きやすい地帯を北東貿易風帯と呼んでいます。
 帆船航海時代にはこのような地球規模で吹く風を利用しないと太平洋や大西洋を渡ることはできませんでした。大西洋を最初に横断してアメリカ大陸をヨーロッパに紹介したのはコロンブスですが、地球規模で吹く風をうまく利用したからこそできたことです。小倉義光著の一般気象学第2版(東京大学出版会)にそのことが書かれていますのでここで紹介します。 

 1492年コロンブスが帆船で初めて大西洋を横断するのに成功したが、それも彼が今日でいう北東貿易風を巧みに利用したからであった。それ以前にもすでに何人かの航海者は大西洋東部を探検し、アゾレス諸島に達していた。アゾレス諸島は、37°Nでスペインのほぼ真西にある。しかしコロンブス以前の人はアゾレス諸島からさらにまっすぐ西に進もうとして、その緯度帯に卓越する偏西風帯にさまたげられた。ところがそれより半世紀も前からポルトガル人は、アフリカ大陸の沿岸に沿って航海するのに、北東貿易風を利用していた。低緯度に行けば東寄りの風があることを知っていたのである。それでコロンブスはスペインを出発すると、まず南下してカナリー諸島に達し、そこから貿易風を利用して速やかに大西洋を横断することに成功したわけである(図2)。帰途はまず北上して偏西風帯に入り、アゾレス諸島に到着した。


(図2)コロンブスの最初の航海航路と、そのとき吹いていた風 (Gedzelman, 1980)

 16世紀から19世紀にかけての帆船によるヨーロッパとアメリカの貿易では、(図3)のようにコロンブスが航海した航路に近い航路で大西洋を横断しています。ヨーロッパからアフリカ西海岸を南下して赤道を越え、そこで奴隷を積んでアフリカを離れ、南半球の南東貿易風を利用してアメリカに渡ります。 

 アメリカでは砂糖や綿、ラム酒を積んで偏西風を利用して大西洋を渡りヨーロッパに戻ります。(図3)からわかるように北緯30度付近の大西洋中央は横断していません。最初に書いたようにこの緯度帯は高気圧帯のため風が弱く、ここに入ってしまうと船の動きが遅くなります。このため積んでいた食料の品質が低下し、積んでいた馬は船員により食べられてしまうので、この緯度帯は当時、ホース・ラティテュード(馬の緯度)と呼ばれていました。

No.15

2002.11 Categories地球規模の空気の流れ

窓際の冷たい風と地球規模の空気の流れ


(図1-1) 日中の空気の流れ

(図1-2)夜の空気の流れ
(図1)海陸風

  冬、暖房の効いた部屋でも窓ガラスの近くに行くとスースーします。熱気球でもわかるように、空気は暖まると軽くなって上昇し、冷えると重くなって下降します。窓ガラスに接した空気は冷やされて重くなって下降し、そこに周りから暖かい空気が補充され、窓ガラスの近くで対流が起きています。つまり、空気の流れができて、スースーするわけです。
話のスケールを大きくして、海岸地方での空気の流れを考えてみます。高気圧に覆われたよく晴れた日、日中は海から陸に向かって風が吹き、夜になると陸から海に向かって風が吹きます。陸地は水に比べて、暖まりやすくさめやすい性質があります。このため、太陽が出ている日中は陸地の方が海水よりも温度が高くなり、陸地にある空気も海上にある空気より温度が高くなります。このため、日中は陸上で上昇気流が起き、海上から空気が流れ込んで「海風」となります(図1-1)。夜になると、海上に比べて陸地の温度が低くなるため、上昇気流は海上の方に起き、陸から海に向かって空気が流れ「陸風」となります(図1-2)。このような空気の流れ方で吹く風を「海陸風」といいます(図1)。
さらに話のスケールを大きくして、地球全体のことを考えてみましょう。赤道付近は常に暑いのですが、北極・南極は氷の世界です。両極地方と赤道地方には大きな温度差があります。今までの話から、赤道方面では上昇気流、両極地方では下降気流となりやすく、地上では赤道方面に向かって両極地方から空気の流れができそうなことが想像できます。
しかし、実際にはそのようになっていません。それは、地球が自転しながら太陽の周りを公転しているからです。しかも、地球の自転軸は公転面に対して傾いています。さらに、地球上には海や陸があり、陸地の上にはヒマラヤのような高い山もあります。このため、地球上の空気の流れは複雑怪奇(?)な流れとなっています。しかし、複雑怪奇な流れも平均化してみると、ある程度規則性のある流れとなっており、各緯度帯で特徴のある流れとなっています。
赤道方面から北上しながら平均的な空気の流れを見てみましょう(図2)。赤道付近で上昇した空気は、緯度30度の少し南で下降気流となります。日本に夏の晴天をもたらす大平洋高気圧はこの下降気流によりできたものです。太平洋高気圧は背が高く、上空の天気図でもその位置に高気圧があります。このため、夏は晴天が続きやすくなります。冬の地上天気図ではよくわかりませんが、上空の天気図を見ると、日本の南海上は高圧帯となっています。
太平洋高気圧の南側では北東の風が吹きやすくなっています。だいたい、ハワイ諸島の緯度帯です。この風は一年中ほぼ安定しているため、この緯度帯の天気も安定しています。この辺りを北東貿易風帯といっています。一方、日本の上空では西よりの風が吹きやすくなっており、高気圧や低気圧はその流れに動かされます。そのため、日本の天気は西から天気が変化してくることが多くなります。


(図2)地球規模の大気の流れ

No.7

2002.9 Categories地球規模の空気の流れ

地球規模の大気の流れ(エネルギー輸送)

 鍋とかやかんに水を入れ、ガスコンロなどで熱すると対流を起こしながら温まっていきます。このときのエネルギー源はガスコンロなどの熱です。地球の大気も低気圧や高気圧が来たり、台風が来たりなどして動いていますが、このような地球大気が運動するためのエネルギー源は、太陽からの光(放射)です。太陽光線が地球に当たる際には、平行光線として考えます。しかし、地球は「ほぼ球」であるため、高緯度の地域では太陽光線が斜めに当たるようになり、地球が太陽から受ける放射エネルギー(熱量)は赤道付近に比べて小さくなります。
ところで、あらゆる物体はその温度に比例して、赤外線の形で熱量を空間に放射しています。地球も宇宙空間に電磁波の形で熱量を放射しています。地球が宇宙空間に放射している熱量は、高緯度ほど小さくなりますが、緯度による差はそれほど大きなものではありません。


(図1)地球規模のエネルギーの流れ
「大気」「海洋」の矢印で、太く長い矢印は南北熱輸
送量が大きいことを表します。

話を元に戻しますが、太陽から受ける熱量は高緯度ほど小さいにもかかわらず、地球から出る熱量が緯度による差が少ないため、1年を通してみると、緯度40゜より高緯度の地域は、地球が受け取る熱量よりも地球から出ていく熱量の方が多くなります。緯度40゜より低緯度の地域では、その逆で地球が受け取る熱量の方が出ていく熱量よりも多くなっています。それならば、低緯度の地域には熱がたまり年々高温となり、高緯度の地域は冷え続け年々温度が低くなってもよさそうですが、そのようなことは起きていません。なぜかというと、海洋と大気が低緯度の余分な熱量を高緯度側に運んでいるからです。(図1)に地球規模でのエネルギーの流れを示しました。
大気も海洋も低緯度から高緯度に直接流れてもよさそうですが、少々複雑ですが規則性のある流れとなっています。それは、地球が「球」であり、太陽の周りを公転し、公転面に対し自転軸が少々傾いていて、大きな大陸があり、ヒマラヤのように高い山岳地帯があるからです。低緯度から高緯度への熱量の輸送の結果生じた平均的な流れのうち、大気の流れは大気大循環ともいっています。海洋では海流ができています。
話のはじめの方で、高気圧や低気圧、台風のことをいいましたが、これらは地球上のエネルギー分布のアンバランスを直そうとして生じた現象です。この中で生きている人間としては、台風や低気圧で大きな災害を受けなくてはならないのはしんどいですよね。しかし、避けられない事ならばその情報を早く察知して、その被害をいかに少なくするかが重要となります。天気予報があるのもそのためです。

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