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お天気豆知識

大気の安定不安定の記事一覧

No.70

2006.11 Categories大気の安定不安定

大気の安定・不安定(その2)

 天気予報で、「暖かく湿った空気が入るため、大気が不安定で・・・・」と言っていることがあります。なぜ、暖かく湿った空気が入ると大気が不安定になるのでしょう。空気の塊は何かのきっかけで上昇したとき、空気の塊の中で凝結が起こっているかいないかで、気温の下がり方が違うことを「大気の安定・不安定(1)」でお話しましたが、このことに関係があります。専門的なことになりますが、上昇する空気の塊の中で水滴が発生しない場合を「乾燥空気」と言います(図1左)。一方、水滴が発生している場合を「湿潤空気」と言います(図1右)。上昇中の乾燥空気の気温の下がり方は、湿潤空気の気温の下がり方よりも大きくなります。


(図1)乾燥空気と湿潤空

 まずは基本的なことをおさえておきましょう。(図2)は観測された気温の高さ方向の分布と、上昇する空気塊の気温の変化のようすを表しています。左右の図ともオレンジの線は、ある地点で観測した気温の高さ方向の分布です。左右の図の違いは各高さの気温が同じでも、右の図は地上付近の空気が左よりも湿っていると考えてください。


(図2)空気の温度変化(地上付近の湿度は右の方が高い)
イ:凝結高度 ロ:自由対流高度
湿った空気の方が、凝結高度が低くなり、自由対流高度も低くなる。

 空気塊は何かの力を受けて上昇します。どちらの場合も、空気塊の中で水滴が発生する(凝結が始まる)までは、気温は100mにつき1℃の割合で低下します(図2中、緑色の線)。 凝結が始まると、気温低下は100m毎に約0.6℃の割合で低下します(図2中、青色の線)。凝結が始まる高さを凝結高度(イ)と言います。さらに上昇を続けると、オレンジの線と交わっています。そこを自由対流高度(ロ)と言います。自由対流高度よりも高いところでは、上昇してきた空気塊の方が周囲の空気よりも温度が高くなっています。
 地上付近の湿度が高い空気が上昇したとき(図2右)は、湿度が低い空気が上昇するとき(図2左)よりも、水滴が出来る高度(イ:凝結高度)が低くなります。このため、湿った空気塊が上昇した場合のほうが、観測された周囲の空気と同じ気温になる高度(ロ:自由対流高度)も低くなります。上昇した空気塊が自由対流高度よりも高い所に行くと、周囲の空気よりも温度が高いため、上昇した空気塊が自由対流高度より高いところまで上昇できれば、外から力を加えなくてもその空気塊は上昇していきます。
 自由対流高度よりも高いところで、ある高さの観測された気温と上昇してきた空気塊の気温の差をみると、湿った空気塊の方が温度差が大きいことがわかります。上昇してきた空気塊と周囲の温度差が大きければ大きいほど、上昇する力(上昇気流)が強くなります。
 読んでいて頭が痛くなりませんでしたか?つまり、下層の湿度が高い空気は湿度が低い空気よりも小さな力で持ち上げるだけで、外から力を加えなくても上昇できる高さにたどりつけます。おまけに上昇する力も大きくなっています。このため、天気予報の解説で、「暖かく湿った空気が入るので、大気が不安定で・・・・」と言っているのです。
 下層の空気塊を上昇させる原因は、日射、低気圧や前線、山岳などがあります。このようなところに暖かく湿った空気が流入すると、激しい上昇気流により積乱雲が発生します。そして大粒の雨が降って時間当たりの雨量が多くなります。暖かく湿った気流の流入が長続きすると、積乱雲が次々に発生して強い雨が続き大雨になります。

No.69

2006.10 Categories大気の安定不安定

大気の安定・不安定(その1)

 空気を入れて膨らましたゴム風船を持ち上げ、手を離すと落ちてしまいます。しかし、水素やヘリウムを入れて膨らましたゴム風船の場合は、手をはなすと空に向かって上がっていきます。空気を入れて膨らましたゴム風船は、入れた空気の重さだけでなく、風船自身の重さも加わるので、周りの空気よりも重くなって落ちます(下降)。息を吹き込んで膨らませた風船には、空気の主成分の窒素よりも重い二酸化炭素や水蒸気が含まれているため、余計に重くなります。空気よりも軽い水素やヘリウムを入れて膨らましたゴム風船は、周りの空気よりも軽いので上がって(上昇)いきます。


(図1)ヘリウムを入れた風船と空気を入れた風船

 空気の塊をある高さに持っていった場合はどうでしょう。風船と同じで、上昇した空気の塊と周りの空気の重さの違いによります。上昇して空気の塊の重さが周囲の空気より軽ければ上昇し、重ければ下降します。


(図2)大気の安定・不安定

 上昇させた空気の塊の温度が周りの空気よりも低い場合(図2右)を考えてみましょう。同じ量の物質は、温度が低い方が密度は高く、温度が高い物質よりも重くなります。空気も同じで、同じ量の空気を比べた場合、温度の低い空気の方が温度の高い空気よりも密度が高くなります。空気の塊が上昇すると、高い所は気圧が低いので、上昇した空気の塊は膨張して温度が下がります。上昇した空気の温度が周りの空気より下がると、密度は周囲の空気より高く重くなり、もとの高さに戻ってしまいます。
 次に上昇させた空気の塊の温度が周囲の空気よりも高い場合(図2左)を考えてみましょう。上昇した空気は周囲の空気よりも温度が高いということは、上昇した空気の塊の方が周囲の空気よりも密度が小さく軽いということです。このため、上昇した空気の塊はさらに上昇していきます。
 このように、空気の塊をある高さに持ち上げた場合、元の位置に戻ろうとするような状態を、“安定した大気”と言います。逆に、空気の塊をある高さに持ち上げると、さらに上昇していくような状態を“不安定な大気”と言います。ヘリウムを入れた風船でも重りをつけると、上昇も下降もしない場合があります。もちろん、空気の塊をある高さに持ち上げて、上昇も下降もしない場合があります。このような状態は“中立な大気”と言います。
 空気の塊が上昇する場合の温度の低下は、上昇する空気の塊の中で水滴が出来るかどうか(凝結が起こっているかどうか)によって違います。上昇していく空気の中で凝結が起こっていない場合は、100mにつき約1℃ずつ温度が低くなります。「空気中の水蒸気の振る舞い」で書きましたが、水蒸気が凝結する場合には周囲に熱(凝結熱)を出します。このため、上昇する空気の塊の中で凝結が起こっているとき、つまり水滴が出来ているときは、100mにつき約0.4℃ずつ温度が低くなります。凝結すると水蒸気の量が減るので、凝結熱も少なくなりますね。上昇しながら水滴ができて、上昇している空気の塊の湿度が小さくなると、気温が下がる割合は、100mにつき1℃に近づいていきます。
 毎日の天気予報で「大気が不安定で・・・」と言っていることがありますが、大気の安定、不安定は雲の発生や発達、大雨と関係しています。

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