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お天気豆知識

上層雲の記事一覧

No.77

2007.6 Categories上層雲

巻層雲

 巻層雲(写真1)は薄いベールのような雲です。学名では“シーロストラタス(Cirrostratus)”と言います。ラテン語の“シーラス(Cirrus)”と“ストラタス(Stratus)”をつなげて出来た名前です。シーラスの意味は巻雲を見てください。Stratusはラテン語で、“広げられた”という意味です。この雲は薄いので、現れていても物の影はできるので、なかなか気がつかないことがあります。しかし、雲が厚みを増して太陽光線が弱まり物の影が薄くなったり、太陽光線による暖かさが弱まってくると、その存在に気がつくようになります。


(写真1)高層雲と暈(太陽と暈の視角は22度)

 巻層雲の雲粒は氷の結晶のことが多く、結晶の形が六角柱の場合は太陽の周りに暈を作ります。このため、巻層雲は(写真1)のように暈を伴った写真でよく紹介されます。この雲が厚みを増していくと暈はなくなります。また、雲のできる高さが低くなり雲粒が水滴になると、中層雲に分類される高層雲になります。高層雲では太陽はぼんやりとしていて、物の影はできません。このように巻層雲から高層雲に変化するときは、天気は下り坂に向かっています。この雲が作る日暈、月暈は、日本だけでなく外国でも天気が崩れる前兆として使われています。
 巻層雲は膜のようになっているだけでなく、巻雲のように羽毛状になることもあります。このタイプの巻層雲は雲の厚さがとても薄いため、太陽の周りに暈を作ることはありませんが、(写真2)のように幻日(げんじつ)を作ることがあります。(写真2)でオレンジ色の矢印のところに、虹の一部のようなものがあります。これが幻日で、暈と同じように、多くは太陽からの視角が22度のところに現れます。


(写真2)羽毛状の巻層雲と幻日(オレンジ色の矢印)

 巻層雲もときには波(波動)のような形になることがあります(写真3)。しかし、巻層雲が波のようになったものを日中に見分けることは雲自体が薄いので難しくなります。でも、太陽が下のほうからこの雲を照らす、日の出や日の入りには波の様子がはっきりします。この雲が空を覆うときはとても美しいものです。この波は、山岳の影響でできた波動のこともありますが、ほとんどの場合はこの雲がある高さで、上下方向に風速や風向の差があるときに発生した波によるものです。


(写真3)波動状の巻層雲(矢印の部分)

 「日の出、日の入り時の巻層雲の波動はとても美しい」とイギリスのCollinsという出版社の「Weather」(2004年出版)という本に書いてあったのを読みました。それから毎日注意して空を見ているのですが、確信を持って「これだ!」という現象に出会っていません。

No.75

2007.4 Categories上層雲

巻積雲


(写真1)巻積雲(雲の部分が上昇流、青空の部分が下降流)

 巻積雲(写真1)は、白い碁石を敷き詰めたような雲、魚の鱗のような雲で、青空を背景にして現れるときれいですね。太陽に照らされると、一つ一つが白く輝いています。巻積雲は別名、“うろこ雲”とか“鰯雲”とも言いますね。学名では“シーロキュムラス(Cirrocumulus)”と言います。ラテン語の“シーラス(Cirrus)”と“キュムラス(Cumulus)”をつなげて出来た名前です。シーラスの意味は巻雲を見てください。キュムラスはラテン語で、“積み重なったもの”とか“塊”という意味です。アメリカやイギリスで出版された雲の本を見ると、巻積雲の覆われた空を“鯖のような空(mackerel sky)”と言っています。(写真1)を見ると、雲の模様が鯖の肌のようにも見えますね。

 巻積雲は高積雲と間違えやすいですが、個々の雲の塊の大きさが違います。巻積雲の場合、水平線から30度以上の上空で雲の塊の大きさは視角で1度以下ですが、高積雲の場合は1度以上あります(図1)。ところで、角度はどのように測るかですが、まず腕をいっぱいに伸ばしてください。次に人差し指を立ててください。人差し指の幅で隠れる大きさが約1度です。ちなみに、握りこぶしの幅は、約10度、五本の指を全部広げたときの親指と小指の幅が約22度となります(図2)。  


(図1)巻積雲と高積雲の視角の違い

(図2)手で測る角度

 さらに巻積雲と高積雲の大きな違いは、巻積雲の場合雲に黒い部分が出来ません。それは、巻積雲も巻雲と同じように高いところに出来るため、そこでは水蒸気の量が少ないので、雲が薄いためです。雲の厚さが薄いため、太陽や月を雲を通して見ることが出来ます。ときには、光冠(写真2)や彩雲(雲の端が虹のような色になること)になることがあります。


(写真2)巻積雲による光冠

 巻積雲を作っている雲粒は氷ですが、まれに水滴のことがあります。もちろん、巻積雲は対流圏の上部にあり、そこの気温は0℃以下です。“水は0℃以下だと凍る”と理科で習ったと思います。しかし、0℃は水が凍り始める温度で、刺激を与えないようにしてゆっくりと冷やすと、0℃以下でも凍りません。まして、雲粒はとても小さいため-40℃近くまで水滴のままでいることが出来ます。このように、氷点下でも水つまり液体のままでいることを“過冷却”と言います。でも、どの巻積雲が氷でできているか過冷却水滴でできているかは、見ただけではなかなか分かりません。
 一般に、巻積雲は穏やかな対流(上下方向の運動)が湿った空気層内で起こると発生します。雲の塊があるところが上昇流域で、雲の塊から見える青空の部分が下降流域です。巻積雲から雲粒が落下して房毛のようになったり(写真3)、レンズのようになったりもします。(写真4)は巻積雲が集まってレンズのようになっていて、まるで魚の群れが空を泳いでいるように見えます。


(写真3)巻積雲から出来た房毛(矢印で示した部分)

(写真4)魚の群れのような巻積雲

 巻積雲が蜂の巣のような形になることがあり、蜂の巣巻積雲とも呼ばれています。形はあまりよくありませんが、(写真5)のような雲です。蜂の巣状の雲は高積雲でも現れ、一般に下降気流があるときに現れることが多く、晴天に向かうか、晴天が続くときの雲と見てよさそうです。ちなみに、(写真5)は昨年(2006年)の9月2日に横浜市北部で撮影したものです。天気図は省略しますが、秋雨前線が日本の南海上にあり、関東地方は北から高気圧に覆われていました。この雲を撮影した日も晴れていましたし、翌日も晴天でした。


(写真5)蜂の巣状の巻積雲

No.74

2007.3 Categories上層雲

巻雲


(写真1)日没後も赤く色づいた巻雲

 青空をバックに、色は白で縮れ毛のような、筋のような薄雲、引き伸ばした真綿のような薄い雲の巻雲、夕暮れのときは太陽が沈んでも赤やオレンジに染まっていてきれいですね。巻雲は別名“すじ雲”とも言い、学名では“シーラス(Cirrus)”と言います。シーラスはラテン語で縮れ毛、巻き髪という意味があります。
 巻雲は雲の中で一番高いところに発生します。このため、日没では他の雲よりも最も遅く、日の出のときは最も早く色づきます(写真1)。巻雲は空に広がっていても、太陽光を遮ることがないくらい薄い雲です。巻雲を通して太陽を見てもまぶしく、巻雲が太陽を覆っても影が出来ます。巻雲が発生しているのは、さまざまな気象現象が起こっている対流圏上部で、そこは水蒸気量が少なく、気温はもちろん氷点下で-40℃以下のところです。このため、巻雲を作っている雲粒は氷で、水蒸気量が少ないところの雲のため、薄い雲となります。

 巻雲といってもその形はいろいろです。髪の毛のような‘毛状巻雲’、ひな鳥の綿毛のような‘房状巻雲’、かぎ状に曲がった‘かぎ状巻雲’、もつれた糸のような‘もつれ状巻雲’、放射状に広がった‘放射状巻雲’、時には太陽を隠すような‘濃密巻雲’も現れます(写真2)。


毛状巻雲

房状巻雲

かぎ状巻雲

もつれ状巻雲

放射状巻雲

濃密巻雲

(写真2)いろいろな巻雲


(図1)鉤状の巻雲の構造

 巻雲は錠、あるいは塊の部分から筋のように尾を引くことがあります。地上から見るとすべて同じ高さに見えますが、(図1)のように塊と尾の部分は高さが違っています。塊のところで雲粒(氷)ができて、大きくなった雲粒(氷)が落下しながら蒸発しています。また、巻雲がある高さで上空ほど風速が強いと、雲粒ができる部分はどんどん先に進み、そこから落下する雲粒は雲粒ができる部分からおいていかれるようになります。このため、雲の塊と筋の先っぽの位置が違っています。

 巻雲は高気圧に覆われた晴天のときにも現れますが、低気圧や台風が近づいてくるときは真っ先に現れ、低気圧や台風が近づいてくるときは、巻雲の量がだんだん増えてきます。(写真3)は能登半島で撮影したものです。写真下の方に見える塊状の雲は積雲ですが、薄いもつれた雲が巻雲です。この日の朝はほとんど雲がなかったのですが、時間と共に巻雲が増え始め、夕方には全天を巻雲が覆いました。翌日は本州の南海上に秋雨前線が停滞して前線上には低気圧が発生し、能登半島付近は気圧の谷となり、天気は曇りで雨も降りました。
 積乱雲が発達しきるとその上部はカナトコ状となりますが、その最も高いところは巻雲です。(写真4)は兵庫県に雷雨を降らせた積乱雲によるカナトコ雲で、筋上に四方に噴出している部分は巻雲です。


(写真3)一面に広がった巻雲
(2001年9月2日志賀町にて)

(写真4)カナトコ雲の巻雲
(1997年7月31日枚方市にて)

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