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お天気豆知識

中層雲の記事一覧

No.81

2007.10 Categories中層雲

乱層雲

 しとしとと雨が降る日、しんしんと雪が降る日。こんな日はどんよりとした雲に覆われて、太陽は全く見えず、日中でも明かりがほしくなるくらいの暗さです。こんな天気の原因となる雲が乱層雲(写真1、写真2)です。普通、雨雲と言っていますね。学名ではニンボストラタス(Nimbostratus)と言います。英語の名前はラテン語の“雨雲”を意味するニンボス(nimbus)と、“広がった”あるいは“層”を意味するストラタス(stratus)からできています。


(写真1)尾流雲を伴った乱層雲
2006年3月1日夕方、横浜市都筑区にて

(写真2)乱層雲(山の中腹にあるのは、層雲)
2000年2月6日朝、紀伊勝浦にて
(晴れれば、山の中に那智の滝が見えるとか)

 乱層雲はおよそ600mから5,000mないし6,000mの間にあり、高積雲や高層雲と同じ中層雲に分類されます。この雲を作っている雲粒は、水滴、雨粒、氷の結晶(氷晶)、雪で、それらが水でできているか、氷(雪)でできているかは雲粒がある高さの温度によります。
 乱層雲は低気圧の中心付近や前線付近に発生します。温暖前線が近づいてくると、太陽がぼんやりとした輝きとなる高層雲は厚みを増し、乱層雲に変わっていきます。その雲よりもさらに200~300mも低い空に雲の小片が発生し、その数を増してお互いにくっつき合って空を覆うと雨が降り始めます。(写真3)は2007年2月17日の夕方、雨が降り出す直前の空です。筋のような雲がありますが、乱層雲の下に層雲がくっつき合ってできた雲でしょう。翌18日は低気圧が本州南岸を通過して東京や横浜は冷たい雨が昼過ぎまで降りました。この雨の中、約32万人が参加した第一回の東京マラソンが行われました。


(写真3)雨が降り出す直前の空(2007年2月17日夕方、横浜市青葉区にて)

 雨や雪は乱層雲だけでなく積乱雲からも降りますが、乱層雲の雨や雪が降る範囲は、積乱雲よりも広い範囲となります。その降り方も積乱雲とは違い、強弱の変化が少ない雨や雪を降らせます。
 写真からもわかるように、乱層雲は他の雲と違い、写真で表現するには特徴のない雲です。作物や飲み水として必要な雨でも、雨の日が続くとうんざりだし、旅行や野外で大事な行事があるときは、晴れてくれたほうがうれしいですね。しかし、歌の中には雨に趣を持たせたものがあります。例えば、北原白秋の詩による童謡や唱歌に雨を歌ったものがいくつかあります。

「アメフリ」  作曲 中山晋平
 雨 雨 降れ 降れ
 母樣が蛇目でお迎ひ嬉しいな
 ピツチピツチ チヤツプチヤツプ
 ランランラン
「城ヶ島の雨」  作曲 山田耕作 大正12年(1923年)
 雨はふるふる、城ヶ島の磯に、
 利休鼠の雨がふる。
 雨は眞珠か、夜明の霧か、
 それともわたしの忍び泣き。
 舟はゆくゆく通り矢のはなを、
 濡れて帆あげたぬしの舟。
 ええ、舟は櫓でやる、櫓は唄でやる、
 唄は船頭さんの心意氣。
 雨はふるふる、日はうす曇る。
 舟はゆくゆく、帆がかすむ。

 これらは、積乱雲から降る短時間の強い雨というより、長い時間しとしと降っている、乱層雲の雨のように感じます。 

No.80

2007.9 Categories中層雲

高層雲


(写真1)高積雲に覆われた空(横浜市都筑区にて)

 中層雲の仲間の高層雲(写真1)は厚いベールのような雲です。学名では「アルトストラタス(Altostratus)」と言います。 高積雲でも書きましたが、“アルト”は“高い”と言う意味で、“ストラタス”は巻層雲で書いたように“広げられた”という意味で、どちらもラテン語です。 日本ではこの雲のことを「おぼろ雲」とも言っています。 
 この雲が出ているときに写真を撮ると、(写真1)のように画面全体がくすんだ色となってしまいます。「菜の花畠に入日薄れ・・・」の歌の題名で、春に桜の花見の頃によく現れる「朧(おぼろ)月夜」や、この季節に火が恋しくなるような肌寒い「花曇り」は高層雲によるものです。 (写真2)のように雪がある日にこの雲に覆われると寒々とした空になってしまいます。


(写真3)巻層雲と日暈

(写真2)雪の日の高層雲
(秋田県湯沢駅にて)

 上層雲に分類される巻層雲と中層雲に分類される高層雲はどちらもベールのような雲ですが大きな違いがあります。巻層雲が太陽を覆うとその周りに暈(写真3)ができましたが、高層雲ではでません。巻層雲を通して太陽を見るとまぶしくて見ることができませんが、高層雲の場合には太陽を見るとスリガラスを通してみたようにぼんやりとしています(写真2)。また、高層雲が太陽を覆ってしまうと木や建物の影ができません。


(写真4)厚み増した高層雲と
点のようになった太陽

 高層雲が厚みを増すと太陽は点のようになってしまいます(写真4)。こうなると天気が下り坂に向かっていることを意味しています。ちなみに(写真4)は2006年2月6日の昼過ぎに撮影しました。この日は夜になると雪が降り出し、低気圧の中心が接近した夜中には雨に変わりました。
 ときには雲の底は波打ってきて起伏が出来ることもあります(写真5)。写真をよく見ると、雲の底で毛羽立っているところがあり、そこからは雨が落ち始めています。高層雲の下にちぎれたような黒い雲が現れると、高層雲は乱層雲に変わり始めていて雨がすぐそこまで来ています。信州の天気俚諺を調べたところ、「くずれ雲が出ると雨」(中野市)や「ちぎれ雲が散乱して出ると雨」(南安曇郡)というのがありました。このことを言っているのかもしれません。


(写真5)船底のようになった高層雲
(雲の底が毛羽立っているところもある)

(写真6)天気が回復に向かうときの高層雲
(山の周辺には積雲や層雲がある)

 高層雲は天気が回復に向かうときにも現れます。雨が止み、次第に雲が高く薄くなっていくときに空全体をおおっていて、やがて切れ目が出来てきます。(写真6)がその例で、2004年10月21日に撮影しました。雲の切れ目が白っぽくなっていて、全体に明るい感じがしませんか。この日は台風21号の影響で午前中は雨が降り、午後から天気が回復に向かいました。見えている山は丹沢山塊で、その上でしょうか、積雲が出ています。中腹には層雲も出ています。高層雲は空全体をおおっている雲で、ロール状の部分は、その高さの風に対して直角な方向に並んでいます。
 高層雲は朝焼けや夕焼けで色づくこともあります。空全体をおおっている雲なので、朝日や夕日に照らされると、空全体が赤くなったりピンクになったりします。イギリス人が書いた雲の本を読んだところ、「高層雲はグレーの特徴のない雲だが、このときばかりは空がサーモンピンクから紫色へ変わり、優雅な雲に変身する」と書いてありました。日本では、単調な灰色の空となる高層雲も「朧雲」とか「花曇」などと優雅な名前で呼ばれています。四季の変化がある日本だから、単調な灰色の空にもこのような名前があるのかもしれません。

No.79

2007.8 Categories中層雲

高積雲


(写真1)高積雲

 高積雲(写真1)は白い塊の雲で、巻積雲と違って少し黒っぽい影の部分があります。巻積雲や層積雲と似ていますが、大きな違いは視角で、それは1度から5度です。


(写真2)空一面に広がった高積雲
(矢印で示した白い山が富士山、
シルエットは大山と丹沢山塊)

簡単な視角の測り方は、巻積雲のところに書きましたが、 腕をいっぱいに伸ばすと、人差し指の幅が1度、握りこぶしが10度、手を広げて小指から親指までの幅が22度です。 
  日本では、高積雲のことを「羊雲」とも言っていますね。学術名はアルト・キュムラス(Alto-cumulus)と言います。アルト(Alto-)はラテン語で“高い”を意味します。キュムラス(Cumulus)は巻積雲で書きましたが、ラテン語で“塊”を意味します。 高積雲が出来るのは大気の中層で、日本がある中緯度では、2kmから7kmの高さに現れます。10種雲型では中層雲に分類されています。(写真2)は高積雲が空一杯に広がっていて、写真の下の方に富士山(3,776m)があるのがわかるでしょうか。雲が富士山より高いところにあるのが実感できるかと思います。


(写真3)高積雲からの尾流雲

 高積雲の雲粒はほとんどが水滴で、高さが7㎞にもなると気温は0℃以下ですね。季節によっては、2㎞でも0℃以下となります。理科で「水は0℃から凍り始める」と習いました、水をゆっくりと冷やすと、0℃以下でも凍らないこともあります。雲粒のように小さな水滴はゆっくり冷やすと、氷点下30℃でも水滴でいることができ、このような水滴を、「過冷却水滴」といいます。雲粒が何かのきっかけで氷に変わると、水滴よりも氷粒の方が成長しやすいのでどんどん大きくなって落下します。(写真3)は高積雲から尾みたいなものが伸びていますが、これがそうで尾流雲と言っています。尾の部分が曲がっていますが、横にたなびいている部分の高さより上の部分高さで風速が強いからです。高積雲の部分は尾流雲を作りながらどんどん先に進んでいくの、このような形になりました。

 上空の強い風が山岳に当ると波ができ、それが山の風下側に伝わります。波の山の部分に雲が発生すると、(写真4)や(写真5)のようなレンズ雲となります。


(写真4)高積雲によるレンズ雲

(写真5)シルエットになったレンズ雲

(写真6)高積雲に出来た波動

 レンズ雲は様々な高さに出来ますが、高積雲が出来る高さのレンズ雲は高積雲に分類されます。レンズ雲の形は空飛ぶ円盤、UFOに似ていますね。富士山が笠をかぶったような雲(笠雲)が発生します。また、翼みたいな雲(翼雲)やコマみたいな雲(吊るし雲)も富士山の周辺に発生します。これらも、雲の高さから高積雲の仲間となります。また、高積雲はレンズ状の雲だけでなく、(写真6)のように、細かな波動が出来ることもあります。  
 富士山の笠雲や翼雲、吊るし雲は雨や強いかぜの前兆ですが、レンズ雲も寒冷前線の通過や上空の気圧の谷の通過を告げています。秋から春にかけて、晴れて穏やかな天気でも、レンズ雲が現れると強い風を吹かせることがよくあります。
 レンズ状雲は絵画の中で見ることができます。その一つが15世紀に活躍したイタリアの画家ピエロ・デラ・フランチェスカが描いた、アレッツォにあるサン・フランチェスコ聖堂の中央礼拝堂にある「聖木の運搬」で、吊るし雲に似た雲が描かれています。フランチェスカはイタリア北部に住んでいました。多分、山岳波動でできたレンズ雲や吊るし雲を見る機会が多かったのでしょう。このような雲が出ると天気が下り坂に向かうことを知っていたのかもしれません。この絵は、キリスト自身が翌日はりつけの刑で使われる十字架を自らかついで運んでいる場面です。普通雲を描くときは綿のような積雲を描きますが、翌日に起こることを暗示するために吊るし雲を描いたのかもしれません。

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