スマートフォンサイトを見る

お天気豆知識

垂直に発達する雲の記事一覧

No.90

2008.7 Categories垂直に発達する雲

積乱雲


(写真1)発達中の積乱雲

 夏の午後、青空の中に上に向かって伸びたどっしりとした感じで、太陽に照らされて白く輝いた雲を見かけます。その雲は頭のほうがカリフラワーのようにボコボコしていたり(写真1)、朝顔の花が開いたようになっていることもあります。この雲が、雲の中で最も背が高く、ときには対流圏を使い切って、成層圏にも達することがある積乱雲です。学名はキュムロニンボス(Cumulonimbus)といいます。ラテン語の「積み重なる」を意味する“cumuls”と「雨雲」を意味する“nimbus”を組み合わせて作られた名前です。
 積乱雲は上空に冷たい空気が入り、更に地面が日射で温められるなどで、上空と地面付近の温度差が大きいとき、つまり大気の状態が不安定なときに発生します。雲の中では激しい対流が起こっていて、幾つもの上昇気流があります。積乱雲を目の前にすると、小さな雲の固まりみたいなもの、セル(細胞)が上昇していくのを見ることができます。


(写真2)発達中の積乱雲とカナトコ雲

 上に向かって成長した積乱雲は空気が安定した成層圏に達するとそれ以上は成長できず、雲は横方向に広がっていき、先の方は刷毛で掃いたようになっています。この部分が朝顔の花みたいな部分で、カナトコ雲と言います(写真2の奥の雲)。カナトコの部分は氷でできています。日本では夏でも上空は西よりの風が吹いているので、カナトコの部分は東方向に広がることが多いのですが、上空の風に比べて上昇気流が強いと積乱雲全体がきのこのような形になります。

 日が沈むなどして上下方向の温度差がなくなると対流は弱まり、積乱雲は衰えてしまいます。そのようなとき、搭状の部分だけがしぼんでしまい、カナトコ部分だけが残されます(写真3)。
 積乱雲が通過すると、大粒の雨が降り、短時間で強い雨が降ります。雹が降ったり雷が発生し、強い風が吹くこともあります。冬ならば強い雪が降ります。トルネードや竜巻も積乱雲によるものです。単独の積乱雲の大きさは数10㎞なので、遠くから見ると(写真4)のように雨が降っているのは限られた部分で、夏の雷雨ならばたいてい30分も待てば止んでしまいます。


(写真3)積乱雲の末期
(カナトコ部分だけ取り残される)

(写真4)積乱雲から降っている雨

 登山中に積乱雲の中に入ってしまうと大変なことになります。回りはガス(霧)に覆われて視界がきかなくなり、大粒の雨が降り、雷も鳴ります。平地だと雷は上から来ますが、雲の中に入った山では横からの落雷もあります。特に岩の多い稜線を行動中に雷に遇うと隠れるところもなく大変危険です。昭和40年代ですが、穂高岳の岩陵を行動中の松本深志高校の生徒たちに落雷があり、死傷者が出ました。でも山で霧に包まれ雨が降り出してもそれが積乱雲によるものかどうかもわかりません。昔の山の気象の本を見ると、このような時に携帯ラジオにガーガーと雑音が入ると雷雲に包まれているので注意が必要だと書かれていました。
  平成に入ってからは谷川連峰の沢で、上流に降った積乱雲による雨で沢が増水し、死傷者が出ています。そのときは事故が起こった沢の周辺で雨が降っていませんでした。川や沢の上流で発達した積乱雲からの強い雨が降ると、今居るところはたいした雨でなくても、しばらくすると急に水かさが増すことがあります。夏、川や沢で遊ぶときは気象情報に十分注意してください。

No.87

2008.4 Categories垂直に発達する雲

積雲


(写真1)晴れた日の積雲

 晴れて風が穏やかな日、特に夏のこのような日、綿菓子のような雲、綿を千切ったような雲が浮いています(写真1)。これが積雲です。綿雲とも言います。学名は「キュムラス(Cumulus)」と言い、ラテン語の「積み重なる」という意味です。積雲の特徴として雲の頭はムクムクしていますが割りと平らで、雲の底は黒っぽくなっています。1個1個の雲が独立していて、それぞれの雲の底の高さがそろっていて他の雲と区別しやすい雲です。


(図1)積乱雲の発生

 積雲は「晴れた穏やかな日に・・・」と書きましたが、このような日は地面が太陽で熱せられて、地面に近い空気が暖められて膨張し、軽くなり上昇します(図1①)。高いところほど気圧が低くなるので、上昇した空気はさらに膨張して温度が下がります(図1②)。ある高度まで上昇すると凝結(水蒸気が水滴になること)が始まって雲粒ができます(図1③)。このようにしてできた雲が積雲です(図1④)。空気中の水蒸気が凝結する温度は湿度によりますが、地面が熱せられると、あちこちで空気が上昇し、それらの空気の凝結が始まる高さは一定です。このため、たくさんの積雲が浮かんでいても(写真1)のように雲の底の高さがそろっています。

 積雲は日が高くなるに連れてその数が増え、大きくなっていきます。やがて日が西に傾くとそれぞれが小さくなり、その数も減ってやがて消えていきます。しかし、上空に冷たい空気があったり、地面付近の空気の湿度が高いと積雲は上方向に成長し、まるで雲のタワーのようになります。これを“搭状積雲”といい、(写真2)のような雲です。ときに発達して雲の頭がカリフラワーのようになることもあり、このような積雲を雄大積雲(写真3)といいます。これらの雲の下ではシャワーのような雨が降ったり、雷が鳴ったりすることもあります。


(写真2)搭状積雲

(写真3)雄大積雲

 空気が上昇したり下降したりする運動のことを対流といいます。対流は日射により地面が暖められたときだけでなく、上に行くほど風が強いときにも発生します。冬に晴れて風が吹いている日に積雲(写真4)が現れますが、このようにして発生した対流によりできたものです。(写真4)のように1個1個の雲の厚さがなく水平方向に広がっている積雲を“偏平積雲”といいます。風は強い日に現れた積雲も、日が高くなると数を増しそれぞれが大きくなります。日が傾くとそれぞれが小さくなって、その数が少なくなります。
 夏にしろ冬にしろ、雲の頭がムクムクしている積雲は成長を続けます。しかし、何かの加減で上昇気流が弱まると雲の周囲が毛羽立ってきて、その積雲の一生は終わりで消滅に向います。(写真5)の上部に写っている、太陽に照らされて白く輝いている雲は消滅前の積雲です。


(写真4)風が強い日の積雲

(写真5)消えてゆく積雲

 絵を描くときに空に思い浮かべるのは綿のような雲、積雲ではないですか。子供が描く雲は積雲が多いですね。雲は時々刻々その形を変えます。時には動物のように見えたり、食べ物のように見えたりもし、子供の頃、あの雲は何だなどと言いながら遊んだことを思い出します。このような対象になるのも積雲です。例えば(写真6)の雲は亀に似ているかなと思って撮りました。積雲は最もポピュラーな雲といえるでしょう。


(写真6)亀のような雲

PC用サイトを見る

Contactお問合せ

PC用サイトを見る

気象情報Weather Information
健康予報BioWeather
生気象学についてAbout BioWeather
コラムColumn

スマートフォンサイトを見る

ページ上部へ
Page
Top

Menu