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健康天気ことわざ

No.37

2011.09.26

福岡義隆

初物七十五日

 日本の食材の大半が輸入に頼っていることもあるが、年中いろんなものが季節感なしに手に入る時代だから、何がその季節々々の初物か分からなくなってしまうことがよくある。そんな時代でも、近くのスーパーに行って見ると、案外「○○直産の初物」という見出しで旬のものが売り出されることがある。初物はおおよそ高値がついているので買い控える客が少なくないけれど、昔気質の風習通の年配の人たちが初物に手を伸ばす風景は微笑ましいとも思うし、日本の食文化がまだ生き残っているとホッとする。
 実は、昔から初物を食べると寿命が75日延びると言われている。たった75日延びたところで平均寿命80歳(男性)~84歳(女性)の昨今、あまり意味がないではないかと 思っていたら、面白いことを書いているのを思い出した。75日に1度ずつ初物を食べておれば、世界中に死ぬ人がいなくなるのではと。まずそんなことはないにしても、毎日のように初物を食べられるように、料理に気を配れば、75日はおろか何年でも寿命を延ばすことになるかも知れないということである。

 初物の中では、とりわけ秋口のナスは美味しい。その美味しいナスを嫁には食べさせないようにという、まさに嫁いじめのような諺、「秋ナスビ嫁に食わすな」がある。実は嫁いびりどころか孫が欲しい願望からの諺で、むしろ嫁の健康を慮ってのことらしい。どういうことかというと、秋茄子(ナス)には種が少ないから、嫁に食べさせると子どもができなくなるからという、縁起的な考え方、あるいは、一部の地域では秋茄子を多く食べると流産しやすくなるからとも言われている。たしかにナスは一般的には消化がよくないので、食欲にまかせて食べすぎると、お腹をこわしやすいのは事実である。似たような諺に、「秋ナスビ嫁に食わせて七里追う」というのもある。味の良い秋ナスがネズミに食われるので、追いかけるということらしい。
 ともあれ、季節々々の初物の味のうまさを、嫁いじめの言い方を借りて譬えたものである。だから「秋サバ嫁に食わすな」とか「秋カマスは嫁に食わすな」あるいは「秋フキ嫁に食わすな」など全国各地にあるようである。 「初物食べるときは東向いて笑え」という。東は恵方ともいうから、やはり縁起ものかなと思って、ネット情報を覗くと、各地からのツイッターによると北は青森から南は宮崎まで全国的に言われている様である。
 ネットの中の発言になるほどと思うようなものも少なくない。2つ、紹介しておこう。 『その年初めて収穫された初物には、他の食べ物にはない生気がみなぎっているはずで、 それを食べれば、新たな生命力を得ることができると考えられていたためです。江戸時代、流通市場が整うと、人々、とくに江戸っ子たちは競って初物を求めるようになりました。 一時は幕府が、魚・貝類・鳥・野菜や果実などの売り出し日を決定し、初物を求める風潮を制限したほどだそうです。』

 もう一つ、業界での初物としての旬を社是のようにしている次のような名言がある、 『農園おかべの三か条として「旬」を考えれば新鮮で「安全」な野菜を食べることができ、「旬」を考えれば「自然」の大切さを知ることができる。そして「自然」の大切さを知れば人がすべての生き物に優しくなれる。もちろん私たち人間にたいしても・・・。 それこそが「Essentials(必要不可欠な物)」と言えるのではないでしょうか。』 『、「旬」というものを第一に考えていきたいと思います。「旬」の定義はさまざまですが、一般的に新鮮で栄養価も高く、美味しく食べられ、値段も安くなるということのようです。 世界の中でも日本ほど四季がはっきりとした国はとても珍しく、さらに地形を見てみると北は北海道から南は九州、沖縄までで気候が全然違います。すなわち、たくさんの「旬」を楽しむことができるのです。そして「旬」はその土地その土地ごとに違うのです。ハウス栽培などをして年中同じものを採るのではなく、その季節にあったものをその季節に栽培し、収穫することで、自然とのバランスがとれ農薬・肥料などを少なく済ませることができ、とても「安全」で栄養たっぷりの食材を提供することができます。』

文献:
松本麟一:『伊予のことわざ』(愛媛文化双書刊行会、1976)
インターネットYahoo情報


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