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健康天気ことわざ

No.20

2011.01.31

福岡義隆

節分の豆まき

~節分に年の数ほど豆を食べると病気にかからない
  春分の豆撒きは無病息災を祈るもの

 節分を祝う風習としては、豆を撒き、撒かれた豆を自分の年齢(数え年)の数だけ食べる。また、自分の年の数の1つ多く食べると、体が丈夫になり、風邪をひかないとされるところもある。豆は「魔滅」に通じ、鬼に豆をぶつけることにより、邪気を追い払い、一年の無病息災を願うという意味合いがある。寺社が邪気払いに行った豆打ちの儀式を起源とした行事であり、室町時代の書物における記載が最も古い記載であることから、少なくとも日本では室町時代以降の風習であると考えられる。初期においては豆は後ろの方にまくことが始まりだった。使用する豆は、お祓いを行った炒った大豆 (炒り豆)である。北海道・東北・北陸・南九州では 落花生をまく(大豆よりも回収し易く、殻ごと撒くため地面に落ちても食べられる、等の利点がある)。

 年齢の数だけ豆を食べるとなると歯の弱ってきた高齢者には無理な話である。若者がぼりぼり豆を齧るのを見ている老人はさぞかし「ごまめの歯ぎしり」するに違いない。勿論このことわざは、力の足りない者がいたずらにいきり立つことを言うのであって、高齢者だけにある諺ではない。若い人でも辛い夢など見ると夜寝ているときに歯ぎしりする人がいる。
 歯ぎしりの原理を考えてみよう。頬骨の前の下縁に、咬筋という顎を開閉させる筋肉があって、三叉神経の作用により規則的な噛み合わせを行っている。ところが睡眠中は、神経がばらばらに作用するので、咬筋も勝手に動いて歯ぎしりを起こすのである。歯並びが悪い場合にも歯ぎしりしやすいこともある。歯ぎしりは歯を磨耗させたりするので歯によくない。こんな諺がある、「神馬の食べる豆を食べると歯ぎしりが治る」という。すなわち、神社に奉納する馬が食べる豆を、人が食べると歯ぎしりを防ぐ呪いになるというものである。

  豆を撒く際には掛け声をかける。掛け声は一般には「鬼は外、福は内」であるが、地域や神社によって違いがある。鬼を祭神または神の使いとしている神社、また方避けの寺社では「鬼は外」ではなく「鬼も内(鬼は内)」としている。家庭内での豆まきで、「鬼」の付く姓(比較的少数だが「鬼塚」、「鬼頭」「九鬼」など)の家庭もしくは鬼が付く地名の地域では「鬼は内」の掛け声が多いという。特色ある節分祭・節分会も参照。炒った豆を神棚に供えてから撒く地方もある。

 豆にまつわる伝承行事に豆占い(月焼き)というのがある。現山口県の防長地域に伝承されてきた行事で月試しとも言われる。節分の豆の中から12粒(閏年は13粒)を選んで、囲炉裏(いろり)や火鉢の熱灰(あつばえ)の上に1月から12月まで順番に並べ、豆が白く焼ける月は晴れ、焼けにくいとか黒くなる月は雨、煙が吹き出だす豆は風がよく吹く月、早く焼けるのは雨が降らない月などと、天気占いの行事とされている。まさに長期の天気予報である。

【注1】節分は立春の前日であり、立春は太陽黄経(天球上の一点から黄道に下ろした垂線の足と春分点との角距離)が315度となる日である(今年はそれぞれ2月3日と4日である)。このように、間接的に天体の運行に基づいているので、日付は年によって異なり、また未来の日付は軌道計算に基づく予測しかできない。なお、基準とする標準時によっても節分の日付は異なるが、日本以外では節分を祝う風習がないので、旧正月のように話題となることはほとんどない。

【注2】筆者は節分のころ降る雪が酸性雪であった観測経験から、「鬼の涙かも知れぬ酸性雨」というエコ川柳を作句した。この川柳は、大陸からの季節風が吹きつける方角を鬼門ということと、中国では酸性雨のことを空中鬼ということから詠ったものである。

【注3】序ながら、皆さんが節分時に買って撒いている大豆はどこでとれたものでしょうか。多分スーパーで購入した袋に書いてあると思いますが、日本国内での大豆の生産は1位の北海道が全国の3分の1で、2位の秋田県の5~6倍も生産している。勿論、ほかの穀物同様に国産の大豆だけでは足りないので外国産大豆の輸入に頼らざるを得ない。最大の輸入先はアメリカで75%を占めている。なお、アメリカは世界の大豆の75%も生産している。
 興味ある諺がある。農民が年貢で苦しんでいたころの話であるが、「年貢いらずの畦豆」というのである。田の畦を利用して作った大豆は年貢の対象からはずされていたわけである。そのことから「ただで手に入ることのたとえ」ともなっていた。年貢の対象にされなかったという意味では得策のようであるが、作りすぎて主作の稲などのほかの作物が減収する憂き目も伴う。そのことへの諺もあるから面白い、「畦豆三斗の損」という。

文献:
志賀 貢 『健康ことわざ』 (夢文庫・河出書房、2000)
本間治人 『俳諧農業譜』 (丸二商行、1990)
星 克美 『村のことわざ事典』 (富民協会、1977)
福岡義隆 『エコ川柳』 (葉文館、1999)


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