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健康天気ことわざ

No.42

2011.12.05

福岡義隆

庭雪時には風邪がはやる

 庭雪時(にわゆきどき)というのは初雪が降る頃のことを言う。天気図型でいうと「西高東低」の冬型の気圧配置すなわちシベリア大陸に高気圧、アリューシャン列島あたりに低気圧が発達し、大陸から寒気が流れ込んで急に冷えると初雪になる。南北に細長い日本列島では、初雪と言っても稚内の10月21日から宮崎の1月24日と3ケ月もの開きがあるが、初雪の頃はまだ寒さになれていないので、風邪を引きやすいということである。時期的にはちょうど逆の春先の暖かくなった頃にもうっかりすると風邪が引きやすく、『雪解け時には風邪がはやる』とも言われる。雪が解けるころは天候の変化が激しいので、体調を崩しやすいこともあって、風邪を引くことが多い。  初雪ともなると、そろそろ炬燵が欲しくなる。内弁慶からきた言葉と思われる『炬燵弁慶』というのがある。西谷裕子さんの解説によると「冬になって年寄りがコタツに入ったきりになること」とある。コタツに一度入ると暖かくて気持ちがよくなり、なかなか出られなくなるのは年寄りに限らない。ネットやゲームに夢中になって部屋に閉じこもりがちの昨今の若者は、さしづめ「ネット弁慶」か「ゲーム弁慶」といったところか、いずれにしても運動不足で健康に悪いだけでなく、家族との会話すらなくなりつつある。生活文化評論家の寺井美奈子さんの警句が思い出される。「暖房器具は体だけでなく心も温めるもの。囲炉裏に象徴されるように太古の昔から人間は火を囲んで暮らし、家族の心のつながりを作ってきた。それが火の見えない暖房器具に変わり、だれも集まらなくなった」不幸中の幸いと言うか、このたびの東北震災で避難所に大きな「家族集団」が額を寄せ集めて、言葉でも励ましあっている姿がTV放映されていた。
 火の見えない暖房器と言えば電気炬燵もその部類であろうが、かって炭・練炭時代の炬燵は心まで温まるような火が見えたものである。その時代の中学の先生が全国的にアンケート調査を試みて、いつ頃から炬燵を使い始め、いつ頃仕舞うかという、まさに「炬燵前線」を描いてたことを思い出す。手元に原論文が見当たらないが、コタツ使用始めの等日線図は初雪前線図(ただし終戦直後ころ)に類似し、コタツ使用終了(仕舞い日)は終雪前線図に似ていたように記憶している。昨今の温暖化時代の初雪・終雪日図は当時に比べそれぞれ遅速していることは言うまでもない。なお、添付した図では温暖化が始まった1980年代の平年値であり、もっとも最近の初雪日を主要な地点で見ると次のようになっていて、数日遅くなっている。
札幌…10月28日 仙台…11月24日 東京…1月 3日 名古屋…12月20日
大阪…12月22日 高知…12月30日 福岡…12月15日 鹿児島…1月 2日

図 『花鳥風月気候図ものがたり』より

文献:
西谷裕子編:『暮らしの健康ことわざ辞典』(東京堂出版、2009)
毎日新聞地方部特報班編:『花鳥風月気候図ものがたり』(毎日新聞社、1995)


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