スマートフォンサイトを見る

健康天気ことわざ

No.31

2011.07.04

福岡義隆

蚊の多い年は暴風あり

 この諺の暴風は台風と思われる。8月にいくつか台風が近づくと南から高温の空気を運ぶので暑い日が多くなる。台風が接近すると雨も降り、蚊が多くなるという。さらには9月にも台風の襲来が多くなるということらしい。蚊だけでなく、台風接近で南風が吹き込む暑いときはトンボも多数群がるということから、「トンボが多く飛べば暴風起こる」という諺もある。蚊の幼虫であるボウフラは水中で生活するように思われがちであるが、魚とはちがって空気中の酸素を呼吸するために、時々水面に尾端の呼吸管を出して呼吸しているのである。ひょっとすると高気圧下よりは低気圧が近づいてくる時の方が圧力の関係で水面に浮いてきやすいからと考えられるが定かではないが、次のような諺もある。

  ボウフラが上にいると雨が降る

 南風の吹く暖かい天気下ではボウフラが発生しやすいというのが一般的で、かつて衛生環境の悪い時代にはハマダラカの媒体によるマラリアの発症に脅かされたものである。昨今でも南アジアのインドや東南アジアなどではマラリアは撲滅されておらず、むしろ地球温暖化により増えつつあるとさえ言われ、温帯の日本が亜熱帯化しつつあると誇張され国際空港近辺からマラリアやコレラ菌を媒介する蚊が見付かっているとも言われている。温度上昇幅から見ても平成の温暖化に類似の平安温暖期には、マラリアが増えたという記録はすでに奈良時代から平安時代にかけての記録にも残っている。図に見られるように温暖化に呼応するように各種気象災害が発生しており(福岡、2010)、マラリア(当時は瘧、ギャクと記載)や天然痘などの疫病が増えて人口増加がやや減ったとされている(鬼頭宏、2007)。

図 古代~中世の気象災害(50年間の回数)

  夏南は池からす

 温暖化で夏季の気温が高くなり熱帯夜や猛暑日が激増している。気温が高くても湿度が高くなければ旱魃の方が心配である。特に西日本にその傾向が顕著になりつつあるようだ。古代奈良の盆地には1万を超える溜池が築造されていた。古墳築造の技術と中国・韓国からの溜池灌漑技術の伝来もうなづけるが、夏は周辺に降雨も少なく旱魃が発生しやすかったこともその理由の一つらしい。上記の諺は、夏季、南方に雲が出ると晴天がつづいて、池の水が枯れてしまうというたとえのようだ。南の方に山岳があり風上における上昇気流で雲ができるが、風下側の平地には雨が降らず池の水も干上がってしまう。まさに南方高気圧(小笠原高気圧)が居座るときである。
 溜池は重要な存在ではあったが平城京でマラリアが多かったのは、「水たまり」にはボウフラが発生しやすいことも関係ありそうで、古代史舞台の古気候研究は生気象学の課題でもあるといえる。

文献:
泉 欣七郎: 『天気と災害予知』 (日本情報センター、1974)
星 克美: 『続・村のことわざ事典』 (富民協会、1979)
福岡義隆・丸本美紀: 『奈良・平安時代の疫病と京内環境(ヒートアイランド推定)』 (日本生気象学会誌、2011)


健康天気ことわざ

archivesアーカイブ

健康気象アドバイザー認定講座

お天気レシピ

PC用サイトを見る

Contactお問合せ

PC用サイトを見る

気象情報Weather Information
健康予報BioWeather
生気象学についてAbout BioWeather
コラムColumn

スマートフォンサイトを見る

ページ上部へ
Page
Top

Menu