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健康天気ことわざ

No.32

2011.07.18

福岡義隆

おかゆを食べ、高台に住み、せっせと歩け、それが長生きの秘訣

こんなことわざがあることを「健康ことわざ辞典」(西谷裕子編、東京堂)で知った。諺と言えば、五七五的に短くて語呂が良く、したがって覚えやすいのが一般的なのであるが、エッセーの一文まるごとのようなものも、言い足りていて存外良いものである。
 「おかゆ」は「粗食で消化のよいもの」、「せっせと歩け」は「しっかりと運動すれば健康によい」というのは明々白々である。一方、「高台」は「日当たりの良いところ」ということらしいが、これこそ気候学的であり防災学的であることから重要なひとことである。
 筆者がかつて広島大学奉職中に調べた弥生時代の高地性集落跡地の分布から、150~200mくらいの接地逆転層からなる「斜面の温暖帯」に関係がありそうである。斜面の温暖帯は欧州では農耕上の好条件で、夜間は放射冷却が弱く昼間は日差しが強いので、瀬戸内海地方など日本でも茶畑や柑橘類の栽培適地になっていて、年間通して暖かい条件下にある。 もちろん、小高い高地性集落には敵からの防衛という戦略的な立地と言う見方もあることは否定できない。
 また、防災的にはこの春の東北地方の大震災とスマトラの地震津波において共通の教訓が命を救った高台が思い出される。2005年秋、スマトラの津波災害で助かったことが新聞で紹介されていた。『異常な引き潮を見たら山へ逃げろ』(漁民モガンの教え)という言い伝えを守って助かったのである。2007年4月の南太平洋のソロモン諸島付近で起きた大地震の際にも、海岸地域で被害を免れたのは高床式という伝統的住宅であったという。共通していることは現代の科学技術に頼らず、先人の知恵で生きている人々が自然災害から逃れているということである。2010年3月11日の東北地震による津波災害から逃れて一漁村があったが、まさにスマトラと同じように年寄りが先祖から伝承されてきた「つなみがきたら裏の丘へ逃げろ」をちゃんと守ったからのようである。

 「おかゆ」と言えば、食中毒でおなか壊したときや、前の晩のディナーで中華料理を食べ過ぎた翌朝、ホテルの朝食に出る粥は身体に優しい中国の食習慣を思い出す。真夏のディナーでも北京ダックがテーブルに並ぶと、学会会長の奥方でさえなり振り構わず喰らいつく様には驚いたものである。場面は違うが根性丸出しの食べ方に似通う様を詠った俳句を思い出す。

 飲食(おんじき)に性(しょう)顕はるる大暑かな   安東次男

 人間にとって最も基本的な飲食ということに人間の本質が顕れると言われる。しかし、この句にそのような教訓的な臭さが感じられないのは季語の「大暑」でくくられているからだと櫂未知子さんの句評が面白い。大暑は別の章でも触れた二十四節気の一つで、まさに夏の暑さの絶頂期に入るときである。ディナーなどで取り澄ましがちな身分ある淑女が人目も憚らず食べているさまは、滑稽ではあるが人間臭さが出ていて、いい句である。暑さで夏は食が進まないと言うが、健康のためには食べた方がいいと筆者は思う。

 お粥は病人食のように思われがちだし、お粥に似たお茶漬けも飲みすぎた後などは特に重宝がられるが、食べ過ぎると胃をいためやすいとされる。昔から「お茶漬けは胃に悪い」と言われているのはそのことに由来する。ことさら熱湯を注いだお茶漬けは、熱過ぎることで食道や胃壁を刺激するからである。夜遅く宴会から帰ってきて寝しなにお茶漬けをさらさらとやるのは、休息させなければならない消化器への負担となること大である。お粥もお茶漬けも一瞬にして口から喉へ流れ、口中に存在する時間が短いために、唾液と充分混ざり合わない。お米のデンプン質を十分に分解させるためには、唾液中のプチアリンとよく混ざるように噛む必要があるのである。流動食だから咬むことはむずかしいが、可能な限りゆっくり食べるように心がけるべきである。

文献:
櫂 未知子: 『食の一句』 (ふらんす堂、2005)
志賀 貢: 『体によいことは健康ことわざの知恵に学べ』 (夢文庫、2000)
http://www.explode.jp/s/daj/daj/135/1/da135046


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