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健康天気ことわざ

No.49

2012.03.12

福岡義隆

健康十訓

 いわゆる諺ではないが、古来言い伝えられている四文字漢字のなかに次のような「健康十訓」というのがある。本エッセーシリーズの趣旨である健康と天気の関係を教訓とする諺的な四文字はこの十訓に直接的にはあまりないが、違った角度から間接的な解釈をしてみると意外に天気にも関わる言葉が含まれていると思われる。

①少肉多菜、②少塩多酢、③少糖多果、④少食多噛、⑤少衣多浴
⑥少言多行、⑦少欲多施、⑧少憂多眠、⑨少車多歩、⑩少憤多笑

 まず、少肉多菜のうちの菜の収穫は気象に大きく左右される。そのうちの一部が飼料になっているということから、結局は肉にも影響される。このことに似た現象にエルニーニョによる異常気象があげられる。エルニーニョの年というのは、南米西岸のペルー海流とフンボルト海流の寒流系がやや暖流になってアンチョビー(カタクチイワシ科)などの雑魚が不漁になり、これらを家畜の飼料として輸入していた国々では、その不足を補うために高価な大豆などを輸入しなければならなくなる。結果的には肉の価格が高騰し少肉とならざるを得なくなり、ヘルシーな野菜食が相対的に増えることが予想される。

 ちなみに、肉食が少なくベジタリアンの多いインドにおける夏のモンスーンが不調な年は、冬のモンスーンが強く南アジアから東アジアにかけて偏東風が強くなりエルニーニョをもたらすことがウオーカー循環によって示されている。「エルニーニョ年の長梅雨にはリューマチや関節痛がひどくなる」ということにもなる。

 次に②少塩多酢も③少糖多果も、昨今の円高による輸入食材が左右してくることに敷衍そうであるが、さほどに天候には関係しそうにない。比較的ヘルシーな和食系が減る傾向にはある。昨今の温暖化やラニーニャ夏における熱中症の多発する夏季は、アイスクリームや缶ジュースなどが大量に消費されがちではあるが、そのような糖分を減らすためにも果物のほうが健康に良い。

 5番目の少衣多浴については、寒い冬季を対象にした教訓なのであろうが、無理に少衣にこだわると風邪をひきかねない、風邪は万病の元であるから、この教訓はあまり推奨できない。多浴にしても省資源的にはやはり逆行してしまうように思われる。

 9番目の少車多歩は是非とも心がけたい教訓である。炭酸ガスなどの温暖化ガスのみならず大気汚染や騒音を撒き散らす車は極力減らしたいものである。もちろん身障者や高齢者には車での移動は最小限必要な手段ではあるが、若い健常者が暑い季節も寒い季節も、あるいは風雨の強い日なども歩くのを嫌がって車を多用したがる傾向にある。省資源・省エネ・温暖化ガス削減などとともに交通事故などの観点からも、この少車多歩は励行したいものである。

 よく笑うことは健康に良いと言われる。少憤多笑は天気に関係なく、笑うことによって初めのうちは交感神経系が活動し副交感神経系は休んでいるという交感神経優位状態であり、その際、血圧がちょっと上がった後、下がるとされ、体に良いわけである。具体的には、交感神経優位時には呼吸筋や腹筋などの骨格筋がかなり強いリズミカルな収縮を起こし、その後に続く副交感神経優位時は栄養を吸収しようと消化器官が活発な働きをするようになり、まさに健康な波をつくるのに笑いが功を奏しているようである。少憤多笑は天気に関係ないとは言うものの、高気圧に覆われたからっとした晴れの日には、気分もよく思わず笑いを伴うことが多いのに対して、低気圧や前線の発達するときはうっとうしく気分が優れず怒りやすくなりやすい。従って、少憤多笑は高気圧型であり多憤少笑は低気圧型であるといっても過言ではないかも知れない。

文献:
角辻 豊:『冗談の通じる人、通じない人』 (法研、1998)


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