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健康天気ことわざ

No.8

2010.08.16

福岡義隆

夏風邪は馬鹿がひく

 はじめに差別用語的表現の馬鹿についてお断りしておく。馬ははたしてバカであろうか。「老馬道知る」という諺は「馬は一度覚えた道は忘れない」と言うのがある。一方では「馬耳東風」とか「馬の耳に念仏」という場合は確かに、馬に何を言っても感動も価値も示さない。鹿はどうであろうか、鹿の角が魔よけとして家の破風に使われるように民間信仰などに重宝がられるが、だから利巧とは言えないまでも、奈良公園の鹿を見ていると賢そうにも見える。ちなみに英語でバカのことをassすなわち「驢馬」のことでもある。

 馬鹿の定義はそこそこにして本論に戻ろう。風邪は寒い時にひくものと思いがちであるが、そうでもないらしい。昔から「風邪に三種あり」といって、寒冷という物理原因で起こるものを「寒冒」、それにバイ菌感染が加わって生ずる「感冒」、そしてウイルス感染による「インフルエンザ」である。事実、風邪が寒さだけで発症するものではないことが、諸々の調査研究で明らかにされている。南極における米軍基地での研究では、あの厳寒の南極ではまず風邪ウイルスは生息しないが、時折送られてくる郵便物に封じ込まれてきた故郷の風邪ウイルスで風邪が小流行することがあるという。
 言いかえれば寒さと言う誘因があってもなくても風邪をひくことがある。その一つが夏風邪で、多くは人の不注意から起こる、すなわち間の抜けた生活からの風邪であるから、夏風邪は馬鹿がひくと言われるようになったのであろう。不注意どころかエネルギー資源の使い過ぎという冷房の利かし過ぎ、冷やし過ぎにより鼻や喉の抵抗力が落ちてウイルスにまけるのである。
 冷房の利かし過ぎと言えば、猛暑の夏の通勤通学電車での移動に伴う体温調節の不具合が体調を崩す恐れがある。そのことを実測で示した例があるので紹介しよう。測定は丸本美紀さん(現お茶の水女子大修士)によって行われたものである。

 夏季は冬季ほどの温度差はないものの、列車への乗り降りで急激な温度の上昇・降下が観測された。夏の観測は2007年8月22日に実施した。当日の結果は以下の通りである。

 冬の場合 、2006年12月20日の夕方の観測結果から分かったことは、外気温(駅ホームなど)の気温が10ないし11℃前後であるのに対して、暖房の効いた列車内に入ると20ないし25℃と十数℃も急上昇している。逆にその高温状態から外へ出る時は急降下を記録していて、かなりの熱ストレスの可能性があると思われる。急に寒い環境に入ると、寒さを防ぐために皮膚近くの血管が収縮する。そうすると、身体の末端にまで血液を送る心臓に負担がかかり、大きな圧力で血液を押し出すので、血液が上がる。
 夏の観測時に血圧と脈拍も同時に測定を試みたが、一定の傾向は見られなかった。しかし冷房車からの出入りの際、血圧が急変することは確認できた。血圧が急昇することもあるし急降下することもある。いずれにしても身体にはプレッシャーとなっていることには違いない。
 その他、日常生活の中で注意しなければならないのは入浴時である。厚生省の統計によると、1994年の入浴死は約2,200人で90年の1.5倍に増えた。原因は心疾患と脳出血だが、寒い脱衣場で裸になると血管が収縮して血圧が上昇し、浴室で身体を一洗いするとさらに血圧は上昇、浴槽につかると血管が温熱効果で拡大して血圧は急激に下がる。関節痛は気圧の変化に加えて、気温の急激な低下も影響している。気温が下がるとまず身体の皮膚温度が下がり、血管が収縮して、血液の流れが悪くなる。関節周辺の血液やリンパ球の流れが阻害されることで疲労物質がたまり、痛みが増加するわけである。1~2時間のうちに気温が3~5℃下がるような場合に特に痛みが激しくなっている。
 したがって、このような気温の急変化現象は特に高齢化社会にとって火急の課題であると思われる。


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