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健康天気ことわざ

No.23

2011.03.14

福岡義隆

この空をふるさとにして卒業す

三宅 桂

 この俳句を読むと、「東京にほんとの空はない」と嘆いて郷里の福島県二本松へ戻って転地療法に徹した愛妻を詠った高村光太郎の詩「知恵子抄」を思い出す。大都会の子らが卒業する学校の上空には「ふるさと」にしたいような本当の空はない。かっては四日市喘息で名高い二酸化硫黄が、そして今では窒素酸化物などによる光化学スモッグやアスファルト道路やアスベストまがいの粉塵、それも体内に容易に入り込む微粒子(SPM)などで身体が蝕まれるほどの濁った空気に満ちている。ちょうど黄褐色の帽子を被せたような都市大気を、かってイエローハット(yellow hat)とかダストドーム(Dust dome)と言っていたことがある。その上に、中国大陸の大気が日本海低気圧によって引き寄せられるような気圧配置のときは、最近の砂漠化の進行している中国内陸からの黄砂も加わり、ますます濃い黄褐色の空気になってくる。

 しかし、どんな環境であれ3月には卒業式を迎え、その祝いには、在学中の勉学や種々の活動をたたえて温かく送り出してあげたいものである。ふるさとにしたい綺麗な空気や土は乏しいにしても、恩師や友人、先輩後輩との思い出がいっぱい詰まっているに違いない。校庭の隅にみんなで育てた花壇の美しい草花に見送られながら、学校をあとにするが、やさしく、時には厳しく教えいただいた先生に花束を贈ることも忘れたくないものである。そんな時、花言葉でも「別離」とか「門出、思い出」を意味するスイートピーが、カラフルで美しく喜ばれそうである。スイートピーには白、桃、赤、藤、紫などいろいろあるが、とりわけ紫色のスイートピーを部屋に飾ると、甘い香りが立ち込め、体調を崩したときにその症状を緩和してくれるという効果があるとされる。この花の芳香成分と紫色が腎陰虚(腎の気が不足する病)を軽くしてくれるとされる。腎陰虚の状態になると耳鳴りや難聴になり(腎は耳をつかさどる)、それだけでなく、腰がだるいとか疲労感が増すとも言われている。

 卒業式のころは、まだ桜も半開、大学卒といってもまだまだ半人前、なのに卒業祝賀パーティでは泥酔する有様というのが昨今の卒業風景である。男女学生を問わず、顔に薄く紅がさすくらいの飲み方が上品で身体にも良さそうである。まさに「花は半開、酒はほろ酔い」の諺のようでありたいもの。人に良い印象を与えつつも、身体によい、すなわち肝臓などを傷めないような酒の飲み方がある筈である。もっとも大事なことは自分にあった酒の適量というものを心得ておくことであろう。酒は百薬の長というが「百毒の長」にしてはならない。
 「酒は百薬の長」というのは、「酒に十徳あり」のひとつとされ、知らないものがいない諺である。ところで十徳というのは、①百薬の長、②寿命を延ばす、③旅行に食あり(旅先で食料のひとつになること)、④寒気に衣あり(寒さしのぎとなること)、⑤推参に便あり(訪問の際に便利であること)、⑥憂いを払う玉ぼうき(心配ごとを忘れさせてくれるこちょ)、⑦位無くして貴人に交わる(目上の人とも臆せずつきあえること)、⑧労を助く(苦労をいやしてくれること)、⑨万人和合す(多くの人と仲良くできること)、⑩独居の友となる(一人でいても淋しくないこと)、というように酒の効用は多岐に及ぶ。バイオクリマ的には④のみが該当しているが、薬のあまりなかった昔は、酒が病気の治療に幅広く使われたようである。たとえば、戦乱の世には傷口の消毒によく用いられた。
 酒と身体の関係では心臓への功罪である。ある程度のアルコール供与では心臓の収縮力を強め、送り出される血液の量を増やしてくれるが、アルコールが多過ぎると逆に心臓の働きが悪くなる。そのことを知ってか『徒然草』のなかで吉田兼好は「百薬の長とはいえども、よろずの病は酒よりこそ起これ」としている。慧眼である。

文献:
孫維良・片桐義子 『病気を治す花療法』 (リヨン社、1992)
志賀貢 『体によいことは健康ことわざの知恵に学べ』 (夢文庫、2000)
有吉堅二 『健康のことわざおもしろ読本』 (青年書館、1995)


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