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異常気象を追う

No.29

2009.04.22

吉野正敏

中国の異常気象

気象災害と異常気象

 気象災害は異常気象によって発生することは言うまでもない。平常な状態に適応して、自然も人も動物・植物も現在の姿になっているのだから、平常な状態から外れた事態が起これば現在の姿は破綻する。それが災害である。
 中国では毎年3億8千万人の人びとが自然災害の影響を受け、4,800万haの農地が被害を受け、直接経済被害額は1,810億元(約2兆2千億円)に 達する。これは、GDPの約2.7%に相当する。近年では、1998年は最悪で2,989億元(約3兆6千億円)という巨額の被害をこうむった。
 このような事態を受け、中国政府は災害対策を重視し、まず、現状を把握し、予測・予報、対策設計、情報伝達、救済計画などの基礎資料を提供するため、気 象災害誌、気象災害分布図帳などの編集刊行を勢力的に行っている。「中国気象災害大典」という極めて詳細な記録集が刊行され始まった。綜合巻1冊があり、 さらに省別の大冊が何冊も揃う。また、それとは別に、中国の国家気候センターが編集した「中国災害性天気気候図集(1961-2006年)」と題する多色 刷りの気候図帳(110ページ)が2007年に刊行された。非常に役立つ出版物なので、すぐに、2008年には重版された。
 今回はこれらから、日本にも役立つことを紹介したい。

主な気象災害の分布

 主な気象災害の分布を(図1)に示す。南東部の沿岸は赤で示す台風経路でわかるように風水害が多い。台風季や梅雨季の豪雨災害は濃い水色の地域で、主として揚子江より南の華南にみられる。また、広東省・海南省にもある。

(図1)中国の主要な気象災害分布の模式図(中国気象災害大典・綜合巻、2008による) a)主な台風経路、b)豪雨多発地域、c)干ばつ多発地域、d)砂あらし多発地域、e)高温多発地域、 f)主な寒波侵入経路、g)雷災多発地域、h)雪害多発地域、i)省などの行政中心地、j)国境、k)省などの境。

 後述するような異常な高温は揚子江以南と北西部の沙漠地域にみられる。ここでは、乾燥・干ばつの被害が多発する。砂塵あらしによる災害は北西部のタクラマカン沙漠などの南疆地域と北部の中央、ゴビ沙漠を中心とした地域にある。
 中国では冬を中心にして寒波の侵入による災害も大きい。北または北西から侵入してくる水色の経路で示されている。それと関連あるように雪災が多発する地域が紫色で示されている。チベットの南側はヒマラヤ山脈北麓の雪災地域となる。

中国の異常高温

 上記のようにたくさんある気象災害のうち、異常高温について少し詳しく紹介したい。日最高気温が35℃以上の日を高温日、38℃以上の日を酷熱日と中国 では呼ぶ。(図2)はその分布である。タクラマカン沙漠を中心とした新疆(いわゆる南疆)と、中国南東部の華南に20日以上、部分的には30日以上の地域 が広く見られる。この中、新疆のトルファンは99日に達し、中国では最多記録である。江南の地域では、福建省の北西部で35日以上、すなわち、35℃以上 の日が一ヶ月以上に達する。

(図2)中国の高温日の年合計日数の分布(1961-2006年の平均)

 図は省略するが、1961-2006年の間の最高気温の極値の分布を見ると、驚くことに、中国の東半分、すなわち、海南島から黒竜江省に至るまで 40-41℃の極値がでていることである。つまり、(図2)の赤色が濃い地域よりかなり北の高緯度まで、高温の極値が出ていることである。
 これは地球温暖化の影響で、東アジアで広く見られる現象かも知れない。高気圧性の天気がもたらす高温の異常発達地域が北上しているのかも知れず、日本を含めて、今後の研究課題である。

近年の異常高温の発生傾向

 上述のように異常高温地域が華南から中国東北部にまで広がっているのは、近年の注目すべき傾向であるが、もう少し詳しく異常高温の発生傾向の変化を見たい。

(図3)日最高気温35℃以上の年合計日数の変化。 (上)中国の西北西部。(下)華南地区。 図中の水平線は1961-2000年の平均値。(中国気象局:中国災害性天気気候図集、2007による)。

 (図3)を見ると、日最高気温が35℃以上の年間合計値は、1961-2006年の平均値では中国の西北西部と華南地区ではほんのわずかしか異ならない が、2003年以降、華南地区が西北西部より大きい値をとっている。つまり、華南のほうがタクラマカン沙漠より暑いのである。この事実に注目したい。
 1980年代後半から1990年代前半にもこのような時代があった。この原因は何だったのか、調べる必要があろう。また、日本では熊谷や、多治見で異常 高温が昨今よく観測され、学界でも注目され、研究されている。この連続エッセイでも取り上げた。中国の東北部までの異常高温の発生と、これらに、何か共通 するところがあるような予感がする。


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