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異常気象を追う

No.46

2009.12.22

吉野正敏

異常気象を追う ― 最終回のまとめ ―

異常気象を追って2年

 この46回をもって連続エッセイ「異常気象を追う」を一応終わりとしたい。約2年間たらずの間、たくさんの読者から質問や感想や励ましの言葉をいただいた ことを、この機会にお礼申しあげたい。46回分の内容を整理・再編して、単行本として刊行の予定なので、その際には改めて読んでいただければ幸いである。
 異常気象の定義についてはこの連続エッセイの最初に書いた。46回の内容をいま振り返ってみるため、取り上げたテーマを(表1)にまとめた。

(表1)連続エッセイで扱った異常気象のテーマとその回数

異常気象のテーマ
1)熱波・異常高温・ヒートアイランド9,11,13,29,35,366
2)台風・サイクロン6,12,37,38,405
3)雨・洪水2,8,27,31,32,33,347
4)寒波・冬の低気圧・冬の雷10,18,20,23,24,436
5)山の雪・平野の雪15,19,21,22,25,26,307
6)干ばつ・冷夏・霧7,16,283
7)植物季節3,14,39,414
8)突風・局地的強風・竜巻・木枯らし4,5,17,42,445
9)定義・リスク・その他0,1,453

46

(表1)をみると、「雨・洪水」、「山の雪・平野の雪」が最も多く、各7回、「熱波関係」と「寒波関係」が各6回で、図らずも、われわれを取り巻く異常気 象の発生頻度を反映している。次いで、「台風・サイクロン」など熱帯低気圧関係が5回、「突風・局地的強風・竜巻・木枯らし」が5回である。やや大きいス ケールと局地的スケールのこれらの風をくくれば合計10回で、「雨や雪」、「熱波・寒波」を上回る。この連続エッセイの出発の時点で厳密な計画を設定して いたわけではないが、結果はこのようになった。今回、“まとめ”を書くに当たって整理してみて、私は驚いている。

扱った地域

上記のテーマを扱った地域は一覧表にはできないが、扱った頻度は次のとうりである。
1) 最も多い地域:日本
2) 次いで多い地域:中国と東アジア
3) やや多い地域:東南アジアと南アジア
4) 回数は多くないが、比較的詳しく事例を紹介した地域:ヨーロッパ・北アメリカ
5) 少ない地域:オーストラリア
6) 全くふれなかった地域:南アメリカとアフリカ
 特に、5)と6)に関しては私の勉強不足の結果で、恥じ入る次第である。

異常気象とは何か ― 再考 ―

 この連続エッセイの最初に異常気象の定義、考え方について述べた。それに従って書いてきたのが46回の結果である。ところが、連載の最後のころになって、 日本語の異常気象に対応する英語が幾つかあり、それぞれ少し違ったニュアンスがあり、使われ方も違うことに気がついた。それらを紹介すると、
Abnormal weather (アブノーマル ウェザー:異常な気象、異常な天気)
Anomalous weather (アノーマラス ウェザー:異常な気象、偏った天気)
Severe weather (シビア ウェザー:激しい気象、厳しい気象)
Unusual weather (アンユージュアル ウェザー:異常な気象、異常な天気)
ただし、この日本語の約は私がつけたもので、英文学者、気象学者、気象庁関係で公的、あるいは慣用的に別の訳語がすでにあるのかも知れない。
 欧米の新聞・テレビ・ラジオなどでは“アンユージュアル ウェザー”がよく出てくるように思われるが、私は統計をとったわけではないし、ここで結論でき ない。“シビア ウェザー”は気象学者・気象局・気象台などでよく使われるように思うが、これも私の感じとしかいえない。
 ところで、欧米で一般人がよく使う“アンユージュアル ウェザー”としてメディアで報道される内容は、例えば、“ピンポン玉やテニスボールのような巨大 な雹が降った”とか、“夏なのに雪が降った”とか、“夏なのに寒くて綿入れを着た”とかが多い。最近の3-4の事例を(表2)にあげる。

(表2)最近の“アンユージュアル ウェザー”の例

現象地域内容と発生期日

塩からい雨が降ったベトナム海岸のベンツェ県50km内陸、SEの強風、2009年3月4日
テニスボール大の降雹オーストリア90%の野生動物が死亡、2009年10月21日
ダスト ストーム中近東(イラク)数百人の住民が呼吸困難、2009年7月8日
落雷フィンランド33名の兵士に電撃、2007年6月18日

 このような、突発的な異常現象である“アンユージュアル ウェザー”については、私の連続エッセイではふれていない。このことに、最後にきて気がついた。 この理由は、私の視点がもう少し長い時間スケールの現象にあったためだと思う。“気候の変化・変動”、それにともなう“異常現象の発生”に視点をおいた結 果である。

最後に

 2010年1月からは、“地球温暖化の影響”(仮題)として、これまでのように2週間ごとに更新して、掲載していく予定である。多くの方々に読んで頂ければ嬉しい。


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