スマートフォンサイトを見る

異常気象を追う

No.1

2008.03.17

吉野正敏

地球温暖化時代の異常気象

地球温暖化と極値

 人間活動の影響で大気中に放出される二酸化炭素その他の気体による温室効果のため、産業革命以来の地球の気温は次第に高くなってきた。いまここで、温暖化のメカ二ズムについてはふれないが、この温暖化は異常気象の発生に大きな影響をもたらしている。このシリーズではこの問題について述べていきたい。
 異常気象の“異常”の定義については、上に述べたが、“異常”とは“極端”とも捉えられる。統計学の言葉では“極値”と呼び、現れる回数(頻度)は少ないが極端に大きいか、または小さい値のことを言う。大気の現象で言えば、何年かに1回、まれに起こる現象によってもたらされる値である。集中豪雨などで、統計学的に計算すると、数百年に1回、まれには千年に1回とされるような雨量を実際に観測することがある。これを極値と呼び、それをもたらした大気現象を異常気象と呼ぶ。
 最近では、夏に日最高気温が38℃、39℃を観測することは珍しくなくなった。昔はこのような高温は極値であり、異常気象であった。しかし、頻々と発生するようになると“異常”とは感じなくなってくる。これは、時代によって“正常”な値が変わってくるためである。
 地球温暖化によって、どのような異常気象が起こるか。順序不同で、考えられる現象をあげると次のとうりである。

  1. 猛暑・熱波
  2. 大雨・集中豪雨
  3. 長梅雨・空梅雨・洪水
  4. 強い突風・強大な竜巻
  5. 雷雨活動
  6. 台風・ハリケーンの発生頻度・経路
  7. 干ばつ・水不足
  8. 海面上昇・海氷面積
  9. 暖冬・冬の季節風
  10. 植物季節・動物季節
  11. 温帯低気圧の発生・発達
  12. 積雪・降雪

以上の他、さまざまな現象に異常が生じる。このエッセイではそれらを順次とりあげていきたい。

地球温暖化の実態

 最近の150年くらいの世界の平均気温の観測結果は(図1)に見るように、小さい上下の波はあるが、上昇の一途をたどっている。特に1910年以降について見ると、約1℃の上昇である。しかも、最近になるほど上昇の率は大きく、20年で約0.5℃と言う大きな値である。

(図1)世界平均の(a)地上気温、(b)海面水位、(c)北半球積雪面積の変化。1850年以降の観測結果。

  (図1)(b)は同じく海面水位の変化を示す。顕著な上昇は気温より約20年遅れて1930年ころから起こっていて、約150mmに達している。また、(図1)(c)に北半球の積雪面積の変化をしめしたが、特に最近の20年余りの期間の減少が明瞭である。
日本について、温暖化したときの高温(夏日・真夏日・猛暑日)の日数の変化を(図2)(上)に示す。夏日(日最高気温が25℃以上)は西南日本では40日以上増え、真夏日(同じく30℃以上)は20ひ以上増え、猛暑日(35℃)以上は5日以上は日本全国どこでもふえるであろうと言う予測である。
このような異常高温に見舞われれれば、例えば、屋外で働く人、スポーツする人は熱中症対策が必要である。また、農作物の高温障害も避けられない。水不足は深刻になり、生活用水ばかりでなく、クーラーの使用が高まり電力不足を来たす。これらは、いずれも長期的な対策を立てることが必要である。

(図2)地球温暖化したときの高温、または、低温の変化

(図2)地球温暖化したときの高温、または、低温の変化

 (図2)(下)は熱帯夜の日数、冬日の日数、真冬日の日数の変化である。熱帯夜は関東平野部、伊勢湾沿岸、瀬戸内海沿岸、九州沿岸などでは20日以上、所によっては30日以上に及ぶ。
 一方、冬は温暖化のために暖かくなり、冬日(日最低気温が0℃以下)の日数は20日以上も減る。所によっては30日以上も減る。真冬日(日最高気温が0℃以下)の日数も減少し、特に中部地方の山地を含めて、いわゆる日本海側気候の地域では10日以上も減少する。
 こうなると、冬の積雪期間は短くなり、積雪深は浅くなる。日本の山地では、冬、積雪として貯えられ、春になって融けだす水を利用して来た動植物や人間の生活に変調をもたらす。スキー場の経営にも影響する。害虫は成虫で越冬できると、活動期間がながくなり、被害が大きくなる。さまざまな影響が生態系に現れるのである。
地球温暖化時代の異常気象は影響する範囲が広くなり、程度がひどくなるばかりでなく、これまではなかった、まったく新しい現象を引き起こすのである。

 


健康気象アドバイザー認定講座

お天気レシピ

PC用サイトを見る

Contactお問合せ

PC用サイトを見る

気象情報Weather Information
健康予報BioWeather
生気象学についてAbout BioWeather
コラムColumn

スマートフォンサイトを見る

ページ上部へ
Page
Top

Menu