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異常気象を追う

No.40

2009.09.30

吉野正敏

東南アジアの台風

台風の国ぐに

 南大東島や台湾の台風については、この連続エッセイ[37][38]にそれぞれ述べた。西南日本や中国沿岸における台風の問題や影響は[12]などでふれた。これらは、東アジアの台風の姿で、特に異常に発達した台風、異常に迷走した進路をとる台風、異常に速度が遅い台風など、深刻な被害をもたらすことを指摘した。
 2009年8月8-9日の台湾に次いで、大きな災害をもたらした台風が2009年9月26日にルソン島を襲った。台風16号(フィリッピンでは台風ケッ ツァーナと呼ぶ)が、首都マニラに26日朝から午後にかけた9時間に416mmの豪雨を降らせた。マニラとその周辺地域のほぼ4分の1の面積の土地が洪水 で冠水した。その他、浸水や地すべりが各地で発生した。27日夕方の政府の発表では約30万人が被災し、死者73人、行方不明23人というが、その後さら に増えているであろう。
 この台風は(図1)に見るように、その後、南シナ海に出てベトナム北部からラオスにむかった。南シナ海で29日に最も発達し、中心示度は960hPa、中心付近の最大風速は40m/sに達した。

(図1)2009年9月28日12時における台風ケッツァーナの進路。 フィリッピンのルソン島を横切り、南シナ海を西北西に進んでベトナムに向かっている。

 フィリッピンのどこかに上陸する台風は毎年平均して25個といわれる。日本の5倍以上の数である。その中には被害が比較的少ない場合もあるが、残念なが ら今回のような被害は時おり発生する。今回のような被害は1967年以来、すなわち40年来である。異常であることには間違いないが、かつて経験したこと がないようなものではない。ここが問題である。東南アジアの国ぐにが背負う宿命と言うべきか、難しく言えば、地域性の要因の重要な一つである。

南シナ海沿岸の国ぐに

 (図1)に示すような進路をとる台風はめずらしくない。いわば台風が通過する本通りと言うべきであろう。中国の南部沿岸・ベトナム北部・ラオス東部などが強い影響を受ける。
 沿岸漁業や沿岸地域の農業はもちろん、通信や交通施設、国境警備、市場など生活必需品、食料・飲料水、住民の健康など各方面への影響は大きい。また、最 近は都市化や工業化が沿岸地域ですすみ、経済的な損害は高額に達する。被害後の復旧に多額の予算を必要とする。日本との合弁企業も多いので、日本の経済に も影響が皆無ではない。これが、この地域の台風の動向にも、われわれは関心をもたねばならない理由である。
 2006年10月にはまず台風シマロン(Cimaron)が中部ベトナムを、下旬には台風シャンサネ(Xangsane)が北ベトナムを襲った。被害は シャンサネだけで死者76人、行方不明532人、被害額はダナン市その他の県を含めて10兆4千億ベトナムドン(1ベトナムドンは約0.005日本円)に 及んだ。両台風でベトナム政府は復興のため8千5百万ベトナムドンを住宅・学校・病院・生産活動・インフラ整備などに支出した。これらは、この国の経済に 大きな影響をもたらした。

ホンコンの台風

 ホンコン科学技術大学のキャムベル(S. Campbell)が東京工芸大学の報告書としてまとめた“ホンコンにおける台風のケーススタディ(2005)、62ページ+付図”は台風災害の歴史を知 るのに非常に良い刊行物である。1847年の台風以来、1999年に至る12個のケーススタディで、もちろん最近のものほど詳しい。いまここで内容を紹介 する余裕がないが、例えば(図2)のような絵画まで集めてある。

(図2)1906年9月18日のホンコン、カウルーン(Kowloon)港における船の被害。 船が大波に翻弄されている。強い雨、稲妻も描かれている。

 この絵は1906年9月18日の台風の場合で、死者・行方不明あわせて約10,000人に及び、ホンコンの歴史上、最悪の台風の一つと考えられている。 多数の船が被害を受けている状態が描かれている。この時の被害を契機として、政府は港に船のためのシェルターを建設することを推進したと言う。


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