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お天気豆知識

No.37

2004.2 Categories地球規模の空気の流れ

地球規模で吹く風

 日本列島は偏西風帯にあるということをよく聞くと思います。このため、高気圧や低気圧がほぼ西から東に移動し、天気も西から崩れてくることが多いことは経験済みです。日本の南は、年間を通してみると高気圧帯となっています。その中心は北緯30度付近です。さらに南に下がっていくと赤道付近にかけて東よりの風が卓越しています。
(図1)は冬と夏の平均地上天気図です。(図1)はこちらをクリック
この図から、北半球、南半球とも30度付近には高気圧帯があり、特に大西洋ではっきりしていることがわかります。北半球では高気圧から時計回りに風が吹き出すことを頭に入れてこの図を見ると、この高気圧帯の極側、北半球の北側では西よりの風が吹きやすくなっています。一方、赤道付近が低圧部になっていて、30度付近にある高気圧帯から赤道付近にかけては東寄りの風が吹きやすくなっています。北半球ではこの東寄りの風が吹きやすい地帯を北東貿易風帯と呼んでいます。
 帆船航海時代にはこのような地球規模で吹く風を利用しないと太平洋や大西洋を渡ることはできませんでした。大西洋を最初に横断してアメリカ大陸をヨーロッパに紹介したのはコロンブスですが、地球規模で吹く風をうまく利用したからこそできたことです。小倉義光著の一般気象学第2版(東京大学出版会)にそのことが書かれていますのでここで紹介します。 

 1492年コロンブスが帆船で初めて大西洋を横断するのに成功したが、それも彼が今日でいう北東貿易風を巧みに利用したからであった。それ以前にもすでに何人かの航海者は大西洋東部を探検し、アゾレス諸島に達していた。アゾレス諸島は、37°Nでスペインのほぼ真西にある。しかしコロンブス以前の人はアゾレス諸島からさらにまっすぐ西に進もうとして、その緯度帯に卓越する偏西風帯にさまたげられた。ところがそれより半世紀も前からポルトガル人は、アフリカ大陸の沿岸に沿って航海するのに、北東貿易風を利用していた。低緯度に行けば東寄りの風があることを知っていたのである。それでコロンブスはスペインを出発すると、まず南下してカナリー諸島に達し、そこから貿易風を利用して速やかに大西洋を横断することに成功したわけである(図2)。帰途はまず北上して偏西風帯に入り、アゾレス諸島に到着した。


(図2)コロンブスの最初の航海航路と、そのとき吹いていた風 (Gedzelman, 1980)

 16世紀から19世紀にかけての帆船によるヨーロッパとアメリカの貿易では、(図3)のようにコロンブスが航海した航路に近い航路で大西洋を横断しています。ヨーロッパからアフリカ西海岸を南下して赤道を越え、そこで奴隷を積んでアフリカを離れ、南半球の南東貿易風を利用してアメリカに渡ります。 

 アメリカでは砂糖や綿、ラム酒を積んで偏西風を利用して大西洋を渡りヨーロッパに戻ります。(図3)からわかるように北緯30度付近の大西洋中央は横断していません。最初に書いたようにこの緯度帯は高気圧帯のため風が弱く、ここに入ってしまうと船の動きが遅くなります。このため積んでいた食料の品質が低下し、積んでいた馬は船員により食べられてしまうので、この緯度帯は当時、ホース・ラティテュード(馬の緯度)と呼ばれていました。


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