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お天気豆知識

No.12

2002.11 Categories局地的な気象現象

放射冷却と逆転層

  高気圧に覆われてよく晴れた日の朝は冷え込みますね。こんな日の日中は暖かいので、薄着で出かけたものの、帰りが遅くなると思わぬ寒さにあったりします。特にお酒が一杯入っていい気持ちになった時はいいのですが、酔いが醒めると・・・・・。 私たち人間を含め、地球上のありとあらゆる物から宇宙空間に向けて赤外線が出ています。最近テレビ番組で人体の表面温度を色分けで示すことがありますが、これは人体の表面から放射される赤外線を測定しているのです。気象衛星も雲や地面、海面から反射された太陽光線を観測するだけでなく、それらから出る赤外線も観測しています。夜は太陽が出ていないので、反射された太陽光線だけでは夜の雲の状態はわかりません。
話が雲の話にそれましたが、よく晴れた日のことに話を戻しましょう。地表面から絶えず宇宙空間に向かって赤外線が放射されています。日中は太陽光線で暖められるので、地面の温度はどんどん上がります。しかし、夜になると太陽からの熱が得られません。夜、雲が出ているとエネルギーは宇宙空間に出ていきませんが、よく晴れた日には地面は放射によりどんどん冷えていきます。このような状態を放射冷却といいます。


(図1)接地逆転層

(図1)の赤い線のように、空気中の温度は一般に上空に行くほど低くなります。ところが夜晴れていると地面が冷えるため、そこに接した空気は冷やされます。そのため、地面からある高さまでは上空に行くほど気温が高くなってしまい、地面に近い部分の温度分布は青い線で示したようになります。専門用語で、上空に行くほど気温が高くなっている層のことを逆転層といいます。(図1)のように逆転層が地面に接している場合を接地逆転層といいます。

ここで、熱気球のことを考えてみて下さい。熱気球の中の空気は、バーナーで暖められているため、周りの空気よりも温度が高いのでそれより温度の低い空気に比べて軽くなっています。このため、熱気球は上昇します。ところが、上昇しても周りの空気が熱気球の中の空気の温度と同じか高い場合はどうなるでしょう。熱気球は上昇せずにある高さで留まったり、逆に下降してしまいます。


(図2)大気の安定・不安定

(図2)を見ながら読んでください。ある温度の空気の塊を別の高さに持っていった場合、何も力を加えないでも上昇する場合、「大気は不安定」といい、逆に下降する場合を「大気は安定」といいます。つまり、逆転層の中ではよほど大きな力を加えないと空気が上昇できないので、空気が安定な状態にあるといいます。

(写真1)は2002年10月28日午前6時半前に神奈川県横浜市都筑区にて撮影しました。左側にある煙突から煙が出ていますが、ある高さから右の方にのびています。この日の朝は風が弱く、よく晴れたので夜間の放射冷却により地面が冷やされ、接地逆転層ができたのでしょう。煙突からでた煙は、始め上昇していますが空気が安定状態にある接地逆転層の中で上昇しきれず、その中で吹いていた風により、(写真1)では右の方に流されました。煙のある高さが接地逆転層の上限です。これより上では高さが増すとともに温度が低くなります。まるで、見えない蓋をされているようですね。


(写真1)2002年10月28日午前6時半前に神奈川県横浜市都筑区にて撮影

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