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温暖化と生きる

No.51

2011.12.21

吉野正敏

温暖化と生きる - まとめ(2)

まえがき

 前回の温暖化と生きる[50]には、この約2年間書いてきたエッセイのうち、まとめ(1)として「温暖化の実態」のどのような事象にふれたかを述べた。今回の[51]では、「われわれが生きてゆくためには、どのような事柄があるのか、影響があるのか」を述べたか、振り返ってみたい。この2年間の総まとめとする次第である。

温暖化影響のテーマ

 人びとの生活や諸産業活動、動植物の成育、生物多様性、さらには、微地形・氷河などの発達などには、温暖化の影響がいろいろな形で現れている。もちろん、そのすべてを2年間に話題として取り上げられなかった。まず、どのようなテーマに触れたかを(表1)にまとめた。

(表1)「温暖化と生きる」の第1回から第49回までに取り上げた温暖化影響のテーマ。

温暖化影響のテーマ対象とした地域・国・大陸など主として取り上げた
エッセイ番号

気象災害アフリカ・南北アメリカ・アジア
東南アジア・ヨーロッパ
[7]
熱波・酷暑・猛暑
 野菜・果物
 コメ
 水産
 動物
日本・中国・ヨーロッパ・アジア
東京・大阪
日本
東京・日本
日本
[14][16][17][19]
[21]
[22]
[24]
[23]
ヒートアイランド熊谷・西安・日本・中国[11][45]
洪水
 長期間浸水
 都市型洪水
 
タイ、チャオプラヤ川中下流
東京・関東地方
 
[48][49]
[12]
竜巻アメリカ合衆国[37]
巨大災害
 東日本大震災
  津波の影響
  インフラへの影響
  3ヶ月後
  政府・報道の対応
 
東北地方
東北地方
東北地方・日本
東北地方・日本
東北地方・日本
 
[32][33]
[35]
[34]
[38]
[36]
季節 
 生物季節
 サクラの開花
 ホタル
 
日本・中国
日本
日本
 
[10][47]
[6]
[13]

 上記のようなテーマにまとめられる。2011年3月11日に起こった東日本大震災はあまりにも深刻な影響をもたらした。もちろん、地震の発生、それによって引き起こされた津波は地球温暖化とはまったく関係ない。しかし、その被害の程度、内容、それにともなって発生した人間や動植物の生活・社会へのさまざまな影響について、学ばなければならないことが非常に多かった。現在でも、被害の影響は進行中である。いずれも、われわれがこれまで、知らなかった事象が多く、そして深刻な問題ばかりである。(表1)に見るように、急遽、6回に渡って取り上げたのはそのためであった。
 次に、影響の問題で特筆すべきはタイの洪水であろう。それは、チャオプラヤ川の下流域には工業団地がありハイテク産業の中心であった。そこへ5月から10月場所によっては11月まで浸水地域が拡がった。そこには日本との合弁企業も多数あった。日本の自動車産業・ハイテク産業・そのほか中小の製造工場は生産活動不能になった。東日本大震災でサプライチェーンが障害を受け、正常な生産活動ができなくなっていたところへ、タイ洪水の影響は新しい課題をもたらした。そもそも、複数のリスクが同時に発生した場合、リスクは掛け算なのか、足し算なのか、あるいは引き算なのか、複雑な実験式なのかさえ、わかっていない。将来の温暖化状態を考えるともっと研究を進めるべきであろう。
 2011年5月~11月の熱帯低気圧・雨季の異常の解明さえ十分にできていない。日本の気象庁は東南アジア・南アジアは守備範囲外であったろうが、“知らない・わからない”ではすまないであろう。日本政府は、『タイで洪水にあった企業に援助金を出す』という。そのこと自体はよいが、もし出すとすれば、その金は国民の税金である。日本の官庁は世界各地の異常気象、それもチャオプラヤ川流域の場合のような局地スケールの現象解明もすぐにできるような、小回りが利く研究体制を構築する必要があろう。
 酷暑。猛暑・熱波と呼ばれる異常気象の影響は2010年・2011年、とくに酷かった。その影響を、野菜・果物・コメなどの農作物や、水産物、などについてまとめた。地球温暖化の影響はもちろん夏に酷くなる。エネルギー問題にもかかわる。バイオクリマの立場からは、熱中症など、健康・疾病などについても書くべきであったと思う。そのこともあり、2012年からは新しく“暮らしの中のバイオクリマ”のタイトルで連続エッセイを続ける予定である。


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