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温暖化と生きる

No.15

2010.08.04

吉野正敏

異常気象の組み合わせ

暖冬・大雪・寒い春・強風・豪雨・猛暑の大行列

 今年になって、さまざまな異常気象に見舞われた。これが日本ばかりでなく、世界的な傾向のように思える。これまで、この連続エッセイでは地球温暖化の影響と考えられる世界各地の異常気象について、もちろん日本の例についても、個々に取り扱い考察してきた。冬の異常気象として、年によって暖冬も厳冬もある。しかし、最近は例えば、冬の前半は暖かであったが後半は低温だったとか、冬全体としては暖冬だが大雪や強風もあったなど、さまざまな組み合わせの異常気象が起きている。
 この連続エッセイで、「気温は乱高下しない。。。。」ということに以前触れた。2-3日間、暖かい期間があり、すぐに寒い期間に移ったりすることはあるが、必ずそこには気象学的な因果関係があり、ただわれわれがそれを把握し解明していないだけだと言いたかったのである。このごろ、晩冬や早春にすでに夏日がでることもある。波には大小さまざまの形があり、変動の幅、周期(時間的変化、日日変化)、地域的な広がりも種々多様である。
 さらに重要なことは、異なった種類の異常気象、例えば、強風・大雨・豪雨・高温・低温・などが、相次いで、時には同時に発生する傾向が強い点である。もちろん、それらの発生の源として、異常に発達した低気圧があったり、前線帯があったりする。さらに、それらの地域スケール(シノプティックスケール)を統合して、もう一つ大きなスケールの対流圏内の循環系が異常な状態に発達していることがほとんどである。
 これらの気象現象としては異なる気温・降水・風によって引き起こされる災害・被害は内容や性格が非常に異なる。建物などの被害が大きく人的被害は少ないもの、死者・行方不明者数が大きく、建造物などの被害は小さいものなど、原因により異なる。これらの研究は比較的よくされている。しかし、それらが連続して発生したらどうなるか。同時に発生したらどうなるか。われわれの知識は少ない。環境汚染の問題で、“複合汚染”が問題となっているのと同じく、異常気象が複合して起きたならば、それによる災害額・被害額の算定は、掛け算なのか、足し算なのかさえ、われわれはほとんど知らないのである。

2010年1月から7月までの異常気象

 今年の冬の1月から、夏の7月までの日本における異常気象を振り返ってみたい。(表1)に見られるように、正に異常気象の大行列であった。

(表1)2010年1月から7月までの日本における異常気象

日付発生地域・地点異常気象の種類観測値・その他の特徴

1月14日日本海側大雪・強風新潟県津南町積雪273cm
2月7日新潟大雪新潟県十日町積雪293cm
2月9日網走流氷平年より7日遅い
2月25日全国暖冬150地点以上で2月として過去最高気温
3月21日御殿場突風野焼きで3人死亡
3月22日全国突風千葉で38.1m/s の瞬間最大風速
3月23日東京九段サクラ開花ソメイヨシノ平年より6日早い
3月29日関東みぞれ・雪遅い降雪・積雪
3月29日御殿場積雪17cm。観測史上最も遅い雪
3月下旬全国寒気強い寒気の流入
4月1日東京九段サクラ満開ソメイヨシノ平年より4日早い
4月1日関東南部強風 
4月15日関東・東京降雪・積雪観測史上遅い記録
4月11-15日東京気温変動大日最高気温11日23.2℃、12日14.3℃、13日20℃、15日真冬並み
4月14日北海道強風最大瞬間風速40m/s. 発達した低気圧による
4月15-17日関東低温日最高気温10℃平年より低温
4月29日東北地方大雨・強風発達した低気圧による
4月29日東北地方南部南風岩手県普代で23.5℃、7月中旬並
5月15日滋賀県突風テント、トタン屋根被害
5月23-24日全国大雨・突風・落雷低気圧発達のため
3-5月全国日照時間平年の約80%
3-5月全国降水量平年より約30%増加
7月3日九州大雨宮崎県えびの市400mm/24時間
7月16日広島集中豪雨173mm/3時間、死者9、行方不明6
7月17日松江・岐阜土砂崩れ住宅被害
7月17日日本各地梅雨明け真夏日となる。関東・北陸・近畿で日最高気温31-33℃
7月18日岩国大雨・河川増水住宅流失
7月18日全国猛暑日群馬県舘林で36.3℃
7月21日岐阜県多治見猛暑日日最高気温39.4℃
7月22日全国猛暑921か所の観測所の中144地点で35℃以上
7月25日関東熱中症死亡者10人

(資料は速報値、新聞、その他による。基準・定義などはさまざまである)

この表をより高い精度の値で完成すること、および、その表の分析が急務である。ここではいかに多種多様な異常気象が次つぎと発生したかを示すにとどめる。

原因は何か

 今の段階で言えることは以下のとおりである。 

1)エル・ニーニョ年であったので、日本の南海上の高気圧が強化された。この高気圧の西の縁を回って高温で多湿な気流が日本付近に流入した。
2)北極振動で北極地方の高気圧が強化され、低温な気流が中緯度に向かって流れでた。これは冬の初めでは、2009年12月上旬~2010年1月上旬と、2010年1月下旬の2回あった。この寒冷な低緯度に向かう気流と、南からの気流との間に前線帯を形成し、その付近の日照時間を短くした。北極圏と中緯度地域の気圧差は1979年以来、最大であった。
3)偏西風の蛇行が激しかった。2009年12月初めよりアラスカ付近で、その直後に北大西洋上で蛇行が起きた。蛇行する偏西風が高緯度側に曲流する部分は高温、低緯度側に曲流する部分は低温になる。

 上記の三つの現象が日本付近でどのような状態になるかによって、低温になるか、高温になるか、日本付近に低気圧が発生し・発達するか、そして局地的な大雨・豪雨・突風・雷が発生するかがきまる。
 ただし、温暖化の影響がこの3原因にどう関わっているか、残念ながら、現在のところは答えを保留しなければならない。
 (写真1)は8月1日に撮影したハスの花である。これまで、8月のお盆のころに満開になると言われていたが、温暖化のためか、すでに満開のハス田であった。ハスの花のほうが原因や理由などをよく知っているのではあるまいか。 



(写真1)満開のハス。岩手県矢巾町にて。(2010年8月1日11時 吉野撮影)

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