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お天気豆知識

No.26

2003.5 Categoriesその他

日本最初の天気予報

 休日にこそなっていませんが、世の中には様々な記念日があります。例えば「鮭」の作りの部分から11月11日は鮭の日です。6月は子供の頃から10日が「ときの記念日」として覚えていました。ところで6月1日は何の記念日だか知っていますか。気象記念日です。

気象記念日は、1875年(明治8年)6月1日に明治政府の手により東京気象台として東京で1日3回の気象と地震の観測が開始されたことから、1942年(昭和17年)に制定されました。場所は内務省地理寮構内、現在の東京都港区虎ノ門にあるホテルオークラのあたりです。ちなみに、わが国最初の気象観測所は北海道函館に気候測量所(函館海洋気象台の前身)が1872年(明治5年)8月26日に開設されています。
ところで、日本で最初の天気予報は、E.クニッピングにより1884年(明治17年)6月1日に毎日3回全国の天気予報が発表されています。その天気予報(日本で初めての天気予報)は次のようなものです。

●午前6時
 全国一般風ノ向キハ定リナシ天気ハ変リ易シ 但シ雨天勝チ
 (Variable winds, Changeable, some rain.)
●午後2時
 変リ易キ天気ニシテ風位定ラス 且雨降ル地方モアルベシ
 (Changeable; variable winds, local rain.)
●午後9時
 中部及ビ西部ハ晴或ハ好天気ナルベシ 北部ノ一部ハ天気定ラス 一部ハ曇天又ハ烟霧ナルベシ
 (Fair to fine in central Japan and the W, partly unsettled, cloudy or hazy in the N.)

E.クニッピング(Erwin Rudolf Theobald Knipping)はプロシア(現在のドイツ)の航海士で、開成学校(現在の東京大学)の教師として来日しました。その後船長や船員を教育する機関に移りましたが、在任中に来襲した3個の台風ついて、船舶から収集した気象報告や、地方測候所や灯台の気象資料をもとに調査をし、日本でも電信を利用した暴風警報の開始を促進する建白書を明治政府に提出しています。それまでに暴風警報発表に対する建白書は何回か出されていましたが、この建白書は受け入れられクニッピングは1882年(明治15年)から気象台に入ることとなりました。
気象台に入ったクニッピングは気圧の測定単位を「インチ」から「ミリメートル」に変えるように提案し、その後、気圧の単位は「mmHg」が使用されています。さらに全国一斉の定時観測も実施しています。このころは日本に標準時はなく、測候所があった京都の時刻が気象観測の標準時として使用されました。
また地方測候所からデータを電信を使って収集するため、気象電報コードも作製しています。気象電報の収集が開始されたのは1883年(明治16年)2月16日午前6時からで、同じ年の3月1日から東京気象台で初めて天気図を作製し、毎日印刷配布が開始されました。当時の印刷技術は石版印刷で、クニッピングが解析した天気図を元に、2名の画伯により版下が描かれています。
彼の目的であった暴風警報はやはり同じ年の5月26日に発表されており、これが日本で初めての暴風警報です。このときの気象状況は、全国的に気温が急昇して気圧は下降し、四国南岸に中心を持つ745mmHg(993hPa)の低気圧によって、四国、九州方面は風が強く、高知の24時間雨量は102mmとなっています。
天気予報の話に戻りますが、クニッピングは毎日の天気予報を発表することまでは考えていませんでした。「天気図で全般的な天気状況を知ってその変化がわかれば、今後天気がどう変化するかわかるはずだ。その結果緊急事態が予想されると警報が発表されるものだろう。となると、警報も天気予報の一部にすぎないのではないか。」というのが外部からの見方でした。クニッピングもこの考えに押され、1884年(明治17年)5月10日にようやく承認された1日3回の気象電報の開始を待って、天気予報の発表を決意しました。

現在は、ゾンデを使った高層観測、気象衛星、レーダーなど、全世界のデータを利用してコンピューターで計算された結果から天気予報が出されています。しかし、当時は気象観測といっても、地上観測だけですからデータ量や気象に対する知識や予報技術に格段の差があることは確かです。明治の人の勇気と災害を防ぎたいという熱意には頭が下がります。


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