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お天気豆知識

No.96

2009.1 Categoriesその他

風を測る、電波で風を測る


(写真1)風見鶏の館の風見鶏

 「風を測る」と言われると、皆さんはどのような道具、機械を思い浮かべますか。鶏の形をした物が古い西洋の家の屋根についているのを見たことがあると思います。そう、風見鶏のことです。(写真1)は神戸市の異人館街にある風見鶏の館の屋根についている風見鶏です。矢の部分が風の吹いてくる方向に向いて、風向がわかるようになっています。


(写真2)風向風速計
(気象庁内気象科学館)

 風にたなびく鯉のぼりからも風が吹いているかどうかわかります。これを応用したものが、高速道路で見かける“吹流し”です。 山間部でよく見かけます。吹流しのたなびき方から風の強さをドライバーに知らせ、横風で車がふらつきかねないことを知らせています。
 風見鶏や鯉のぼり、吹流しは感覚的に風向きや風の強さがわかります。風向や風速を数値的に測るためには、(写真2)のような飛行機みたいな形をした風向風速計を使います。プロペラと反対側に垂直尾翼が付いた部分がありますね。垂直尾翼があるために全体が風の吹く方向を向き、プロペラが風の強さに応じて回転します。これらが電気信号に変えられて風向と風速を表します。

 次は、電波で風を測る話です。空間的な雨や雪の強さを測るためにレーダーが使われています。レーダーから出た電磁波は雨や雪で反射(本当は特別な散乱)されるだけでなく、空気中に含まれている水蒸気密度の違いがあるところでも反射されます。水蒸気密度の違いがあるところは風に流されるので、連続して電波を出してそこから反射(散乱)されて帰ってくる電波を観測すると風の向きや風の強さを計算することができます。地面に電波の発信機と受信機を置いて上に向けて電波を発射し、散乱されて帰ってくる電波を受信して、色色な高さの風向風速を10分間隔で観測しています(図1)。このような機械のことをウインドプロファイラといいます。


(図1)ウインド・プロファイラー(提供:気
象庁)

(写真3)熊谷地方気象台のウインドプロファ
イラ

 ウインドプロファイラの観測所は全国に31箇所あります。観測できる高さは、天気や季節で違っていて、最大で9㎞まで観測ができます。(写真3)が熊谷地方気象台にあるウインドプロファイラです。カバーで覆われていますが、その中に5本の送信機と受信機が入っています。

 それではウィンドプロファイラの観測結果を見てみましょう。2007年7月14日14時過ぎに、大型で強い台風4号が鹿児島県鹿屋市付近に上陸し、本州南岸沿いを東に進みました(図2)。


(図2)2007年 台風4号の経路図

図3→別ウィンドで開きます)はこの台風がウィンドプロファイラのある、鹿児島市のすぐ南を通過した14日の観測結果で、(図4→図3と同ウィンド)は台風が鹿児島市に最も接近したときの観測結果です。矢羽が風の吹いてくる方向、つまり風向を現し、羽の数が多いほど強い風が吹いていることを現しています。ちなみに、短い矢羽が5ノット(約2.5m/s)、矢羽1本が10ノット(約5m/s)、黒く塗りつぶされた旗ひとつで50ノット(約25m/s)を意味しています。
 両方の(図3)と(図4)からわかるように、台風が接近する前は東寄りの風が吹いています。台風が接近するに連れて風向が北寄りに変わり、台風が抜けてからは西寄りに変わっています。風向が反時計回りに変化していますね。このような風向の変化は台風が自分の居るところより南側を通ったときの風の変化の特徴です。しかも上空の風も同じような変化になっています。
 地面に近いところを中心に風の強さを見ると、8時から11時頃までは黒い三角の旗が続いていますが、台風が通過したあとの16時以降は黒い旗が現れていません。通過前は25m/s以上の風でしたが、25m/s以下の風になっています。台風の進行方向の東側は危険半円、西側は可航半円というのを聞いたことがあると思います。鹿児島市は台風が通過する前は台風の東側の危険半円にあり、通過後は台風の西側の可航半円に入ったので、このようなことになりました。
 ウインドプロファイラは電波を上に向けて出しているので、その上を通過するものは何でも観測してしまいます。でもそれらは特徴的な観測結果になるので、風ではないと判断して自動的に取り除かれます。しかし、ある秋の風が穏やかな日の夜から翌日の明け方にかけて、福井で2000m以下の高さでとても強い風が観測されました。その後の調査の結果から観測された強い風は渡り鳥だとわかりました。ここでもそのデータを見せたかったのですが、(図3)や(図4)を作った気象庁月報というCDには、渡り鳥を観測したことによる強風部分は削られていました。興味のある方は、測候時報という雑誌の第70巻(2003年)の102ページと103ページ(第3巻)をみてください。もちろん、今では渡り鳥による観測結果は自動的に取り除かれています。

※台風やウインド・プロファイラーの観測データは気象庁提供のものを使用しました。


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